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採用計画の立て方(テンプレート有)
内容、ポイント、新卒と中途の違いを解説
労働人口が減少していく中で、採用環境は厳しさを増し続けており、計画的に採用活動を進めないと、必要なタイミングで自社に合った人材を確保するのが難しくなってきています。
そのため採用活動にこれから携わるという方は、まず採用計画の立て方を知ることをおすすめします。また、例年通りに採用活動を進めているが上手くいっていない、いつも欠員補充に追われてしまっている、という場合も改めて採用計画から見直してみましょう。そうすることで自社の採用活動の課題や改善点が見えやすくなります。
この記事では、採用計画に必要な内容と計画のポイントを解説します。すぐに使える採用計画書のテンプレートもダウンロードできるようにしていますので、ぜひお役立てください。
1. 採用計画の必要性と意味
なぜ採用計画が必要なのか、まずは改めて整理しましょう。目的を理解しておいたほうが、計画を立てやすくなります。
1-1. 採用活動の迷いを減らすため
採用活動はやるべき業務が多く、一つひとつの内容や方針について、その場で決めていくのは大変です。事前に計画を立てておけば、迷いなく効率的に進められます。また多くの場合、採用活動は一人で実行するわけではありません。計画がないと、どんな人を採用するか、いつ何をするかなど、採用活動に関わる担当者の中で認識がブレてしまいます。そのため全体の指針となる計画が必要です。
1-2. 採用の機会を逃さないため
採用活動を始めてから実際に人材を採用できるまでには、少なくとも数か月のタイムラグがあります。そのため計画を立てて先回りして動かなければ、新しい人材が必要なタイミングに採用できません。また学生や転職者の活動には、ある程度の決まったスケジュールや活発に動く時期があります。ターゲットが就職・転職したいと考えて動き始めたタイミングを逃さず、存分に動けるよう準備しておくことが大事です。
1-3. 進捗と成果を確認できるようにするため
事前に計画を立てていないと、採用活動が上手くいっているのかもわかりません。たとえば年間の採用目標を決めていれば、半年が経過した時点でそのままのペースで進んでも問題なさそうなのか、もっと予算を増やして加速させたほうがいいのか、などの判断ができます。計画に対する進捗や成果の振り返りができていないと、採用活動で何度も同じ失敗を繰り返してしまいかねません。
2. 新卒採用と中途採用の採用計画の違い
新卒採用も中途採用も、採用計画が重要なのは変わりません。ただし、いくつか注意すべきポイントの違いがありますので、計画をする際は意識しておきましょう。
2-1.新卒採用における採用計画の特徴
新卒採用は、基本的な年間のスケジュールが決まっています。多くの学生がそれに合わせて活動するため、採用機会を逃さないために、中途採用よりも細かいスケジュールの計画が必要です。一方で新卒採用だと、選考で経験・スキル・資格などを問うケースが少なく、総合職であれば配属されるポジションも入社後に決まるため、人材要件は中途採用に比べて抽象的な内容になりやすいです。
2-2.中途採用における採用計画の特徴
中途採用は新卒採用のように決まったスケジュールがないため、どちらかといえば柔軟性が求められます。年間の計画は立てておきつつも、現場のマネジャーとやり取りしながら、事業上強化が必要なテーマや欠員が発生しうるポジションなどをタイムリーにキャッチし、計画を調整していくことが重要です。また中途採用においては、各ポジションでどういった能力の人材を何名ずつ採用するのか、といった人材要件と要員計画をより明確にする必要があります。
3. 採用計画を立てるための準備
実際に計画を立て始める前に、いくつか準備しておくべきことがあります。
3-1. 経営者とのすり合わせ
採用計画は経営計画と紐づいています。会社の事業や組織がどんな方向に進んでいくのかによって、どんな人材が必要なのか決まります。経営者の思い描いているビジョンや考えと採用計画とのズレが出てこないよう、早めに認識をすり合わせておきましょう。
3-2. 過去の採用活動を振り返る
初めての採用でない限り、基本的には過去の採用活動の経験を参考にして計画を立てます。採用人数や選考通過率などの定量的な側面と、面接のメモや担当者の所感など定性的な側面の両方から、過去の採用活動で上手くいった点と課題を振り返ります。適性検査を導入している場合は、候補者の傾向を知るのに適性検査の結果が役立ちます。
3-3. 採用市場の動向を知る
新卒採用における学生の活動時期や、求職者が転職に求めるものなどは年々移り変わっていきます。世の中の一般的な学生や求職者の動向・トレンドを知り、それに合わせて採用計画を調整していく必要があります。こうした採用市場の動向を知るには、文部科学省や厚生労働省など国が出している調査データと、株式会社リクルートの就職みらい研究所が発行している「就職白書」など民間企業の調査データを参考にすると良いでしょう。
3-4. 競合他社の採用活動をチェックする
新卒採用でも中途採用でも、ほとんどの場合は他社と比べられたうえで応募や入社の意思決定がされます。競合他社の採用活動を知っておくと、採用のターゲットや訴求を変える、より早いタイミングで動くなど、差をつけるための計画を立てやすくなります。ただし事業上の競合が採用競合とは限らないため、対象の選定には注意しましょう。
4. 採用計画に必要な内容
具体的に採用計画に必要となる内容を挙げていきます。この内容をベースにしつつ、自社に合わせて、追加したり調整したりしてください。
4-1. 目的
何よりも、まずは目的を明確にすることが大事です。将来の幹部候補を採用したいのか、特定の部署の欠員を補充したいのか、などによって採用計画は大きく変わってきます。採用担当者の間でも目的の認識にズレがあると、採用活動全体に影響があるため重要です。目的が複数考えられる場合は優先順位をつけるか、目的ごとに計画を立てましょう。
4-2. 人材要件
目的が定まったら、その目的を達成するためにどんな人を採用したいのか考えます。これが採用手法の選定や訴求の仕方、さらには選考基準の土台にもなります。人材要件を考える際には、経験・資格などの明確な基準から、求める人物像のような抽象的な内容まで考えていきます。また人材要件は、必須の内容と歓迎レベルの内容に分けて整理しておきましょう。
4-3. 目標人数
人材要件が決まったら、各ポジションでいつまでに何人を採用したいのか考えます。経営方針からトップダウンで導き出した必要な人員と、現場の要請からボトムアップで導き出した必要な人員を踏まえて、人事として目標を設定・調整します。実際にどれくらい採用できそうなのかの予想は、過去の採用活動の傾向がないと難しいですが、仮だとしても目標を決めておくことが大事です。採用したい人数によって、予算のかけ方や、求職者へのアプローチの仕方、必要な期間などが変わってきます。目標人数に対する充足率は振り返りの基準にもなるため、暫定的に決めておきつつ状況を見て調整していきましょう。
4-4. 予算
人材要件と目標人数が決まったら、過去の1人あたりの採用コストを参考に、どれくらいの予算が必要か見積もります。就職みらい研究所「就職白書2020」の調査によると、新卒採用における1人あたりの平均採用コストは93.6万円、中途採用では103.3万円で、全体の傾向としては100万円前後が相場と言えます。とはいえ採用の難易度や緊急度によって必要な予算は変わりますので、そうした条件を加味して調整していきましょう。
4-5. 担当者
誰が何をいつ担当するのかを決めておきます。会社や採用の規模によっては1人ですべてやることもありますが、募集職種、新卒/中途、候補者対応と社内調整などの業務内容によって、可能であれば分担しましょう。採用手法によってパートナー企業との連携が必要だったり、選考で現場の社員に依頼したり、採用活動の関係者は状況によって変化していきます。ただし、その調整を誰がやるのかはあらかじめ決めておけると良いでしょう。
4-6. スケジュール
人材要件(どんな人を)・目標人数(いつまでに何人)から逆算して、いつ何をするべきかのスケジュールを立てます。新卒採用は学生の行動スケジュールが大体決まっているため、基本的にはそれに合わせて調整します。中途採用はターゲットや採用手法によって、募集から内定まで早ければ1~2か月、長いと半年から1年以上かかることもあるため、採用の緊急度を踏まえてスケジュールを立てましょう。
4-7. 採用手法
求人サイトや人材紹介エージェントなど様々な手法があります。それぞれの手法には、特定の職種に向いている、採用人数が多いほどコストパフォーマンスがいい、コストは高いが早く確実に採用できる可能性がある、など特色があります。ここまで整理した人材要件・目標人数・予算・スケジュールのバランスを見て、自社に合ったものを選び、使い分けましょう。
採用手法について、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
新卒採用で失敗しない母集団形成のポイント 基本の考え方から具体的な設計方法まで解説
中途採用の担当者向け完全ガイド 新卒採用との違いから全体の流れまで
4-8. 選考
選考の基準とプロセスについても内容を固めておきます。選考基準は人材要件をベースにしつつ、より具体的に何をどのように見極めるかまで考えておきましょう。そして選考基準に合わせて、面接や適性検査などを何回・どのタイミングで・どんな内容で・誰が実施するのかというプロセスを考えます。選考に時間をかけすぎると他社に流れるリスクが高まるため、スピード感も重要です。また見極めにばかり意識が向きやすいですが、選考の中で入社意欲を高める(動機付け)ために何をするかも考えておきましょう。
4-9. 内定後フォロー
採用活動は内定が出て終わりではありません。入社の承諾率を可能な限り高めるために何をするかも準備しておきましょう。特に新卒は内定から入社までの期間が長いため、面談・座談会・入社前研修などのフォローが重要です。
内定後フォローについて、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
内定者フォロー完全ガイド 内定辞退の防止、入社前後の育成・定着のための内容・注意点を解説
5. 採用計画書テンプレート
採用計画書のExcelテンプレートを用意しました。テンプレートの項目に合わせて内容を埋めていくだけで、すぐ簡単に採用計画を立てられるようにしています。どのように計画を立てたらいいかわからないという方は、ぜひダウンロードして使ってみてください。慣れてきたら、自社に合わせて項目を追加するなど、アレンジして活用いただいてもかまいません。
6. 採用計画の立て方のポイント
最後に採用計画を立てる上で注意したいポイントを3つお伝えします。
6-1. 中長期での計画も立てておく
採用計画は基本的に1年程度のスパンで立てられることが多いですが、5年後・10年後を考えたときに、今年の計画が適切なのか考えることも重要です。たとえば、欠員補充などに比べると緊急度は高くないものの、将来の事業計画においては必要となる職種などがあるはずです。マネジメント層の採用などは、数年単位でじっくりと進めることもあるでしょう。オウンドメディアによる広報など、短期ではなく中長期的で効果を発揮する採用手法もあります。
6-2. 人事(採用担当)の外の声も取り入れる
人事など社内の一部の人間だけで採用計画を立てていると、どうしても考え方に偏りが出ます。募集職種の部門のマネージャーに求める人材像をヒアリングしたり、新入社員にアンケートを取って、他に検討していた企業・入社の決め手・入社後のギャップなどを聞いたりすることも大切です。新卒採用であれば、内定者の話も翌年のヒントになります。経営陣が目指す採用の方向性と、現場の実態の両方を把握し、調整していくのが人事(採用担当)の役割だと考えておきましょう。
6-3. 必ず振り返って改善を繰り返す
採用活動が一区切りしたら、必ず当初の計画と照らし合わせて振り返りましょう。振り返りは、エントリー数・採用数などの「量」と、自社にフィットする人材からの応募や入社があったかという「質」の2つの観点から行います。また、採用目標に対する充足率などの最終的な成果だけでなく、募集や選考の各プロセスごとに課題がなかったかも見ていきましょう。そうして上手くいった部分は継続し、良くなかった部分は次に改善することで、どんどん採用計画が洗練されていきます。
まとめ
計画を見直すことで、より効率的かつ効果的に採用活動を進められるようになります。この記事の内容とテンプレートを参考に、自社に合わせた採用計画を立ててみてください。