株式会社 高津製作所
- 従業員数:
- 414名(海外を含むグループ全体/2023年5月31日現在)
- 業種:
- 製造
- 課題:
- キャリア自律
- 配属・異動
"新社会人一歩目のデザイン"には、
サイエンスとリアルな想像力が不可欠
~多様性を引き出す採用×個人の可能性を
最大化する部署決定への挑戦~
本人の適性や希望をもとに決定していた部署配属において、マッチングの精度と本人の納得感をより高めたい。
選考中にSPI3、内定者にSPI3 for Employeesを実施し、配属面談と組み合わせながら、初期配属時の参考情報として活用している。
人事側もデータがあることで自信を持ってマッチングの高い配属先を勧められている。内定者も自己理解が深まり納得感が高い部署に歩めている。
(役員)
私たちが所属している「PE室(人事戦略室)」は、ピープルマネジメント&エンゲージメントの略称です。
もともと私は外国企業や総合電機メーカーで経営企画やタレントマネジメント、M&A業務などを経験して、約10年前に高津製作所に入社、経営企画部長に就任しました。
当社に来て最初に強く思ったのが「高津の経営の根幹は“人”にある」ということです。当社の仕事の特徴は、モノではなく「ヒト」が設備を創り上げていることです。その設備を使って、お客様がモノを生産します。当社の競争力を高めるためには、人の成長と、のびのびと働いてもらえる文化への変化の必要性を感じました。
「人が文化をはぐくみ、文化が人をはぐくむ──」
このような状態を実現するためには、人事部門は人事実務の運営だけではなく、HRBP(経営パートナーとしての戦略人事)やチェンジエージェント(組織における変革の仕掛け人)の立場から経営を支援していく必要があります。
そのような考えのもと、2年前に現在の「PE室(人事戦略室)」を立ち上げ、採用業務やオンボーディングをメインに、広義の意味で社内外へのブランディングやファンづくりをミッションとし、経営支援となり得る人事業務全般を企画・運営しています。
(役員)
企業の成長のためには、人の成長が不可欠であると確信を持ちましたが、残念ながら当社も10年前は社員のエンゲージメントも芳しくなく、人が育ちづらい側面もありました。
採用も同様で、大学の専攻や性別に偏りが大きく、入社後の配属も最適といえる状態にはありませんでした。そこで、文化形成のスタート地点である「採用」をまずは改革しようと決意しました。採用ホームページも刷新し、求める人物像に訴求しやすい内容にするなど、すべてを変えていきました。
採用を改革した初年度から、海外留学経験者や文系出身者、女子学生など、当時の同エリアの同業界にしては非常に珍しく、多様性がある学生を採用することができました。
私も率先して多様性のある人材の採用に最大限の熱量を注いできた自負があります。面接では学生一人ひとりの経験と価値観に寄り添うことで、学生が共感を覚え、魅力的と感じる社員が直接アプローチする工夫も行いました。多様性がある人材を採用しようと思ったら、実際に多様性を体現している社員が担当することが一番効果的です。
もちろん社内では、改革当初から賛同者ばかりだったわけではありません。新しいことにチャレンジすると、多少の摩擦は起こるのが当然です。しかし、採用ポリシーの変更後に入社した社員が3年目を迎える頃になると、社内に占める人数割合も増え、一人前に育ち活躍するようになるにつれて、その人たちが、徐々に会社の文化を変え始めていったのです。
汗を流しながら「人を採用し、採用した人が文化をはぐくむ」を体現してきました。
(人事担当)
私は、新卒で入社し、 PE室(人事戦略室)で働いています。
入社1年目の半年間の現場研修を経て、現在入社2年目です。新卒採用・配属・新人研修・社外向けのブランディングを担当しています。
もともと「人が好き」という自覚はあったのですが、当社のキャリア面談時に「人事が向いているのでは?」とのアドバイスを受けたことも影響し、人事に配属希望を出しました。
就職活動における社員との接点は、その学生のキャリア選択に大きな影響を及ぼすことを自分自身の経験からも実感しています。特に初期配属は、社会人としてのキャリアの第一歩であり非常に重要となります。責任の重大性を実感しているからこそ、実際に自分が新入社員の初期配属を担う立場になると、何かしら拠り所とする情報がもっと欲しいと感じるようになりました。
また、新入社員としても、配属先を形式的に伝えられるだけでは、不安を抱きやすくなってしまうことも感じていました。個人の志向や性格に寄り添った根拠を示してもらえれば、納得しやすく、前向きな気持ちで社会人としてのスタートが切れるのでは?と思うようになりました。
(役員)
採用する学生が多様化するということは、それだけ配属先の可能性も多岐にわたるということです。新入社員一人ひとりの可能性を最大限に引き出すために、私たちなりの確度の高い裏づけが欲しくなりました。
そこで、採用時にSPI3を活用していた延長線上で、個人の価値観や働き方の志向・モチベーションリソースがより浮き彫りになる「SPI3 for Employees」を配属に活用したいと考えました。
もともと、SPI3の科学性をはじめとした品質の高さには信頼感を抱いていました。SPI3はその人の根幹や変わりにくい資質を測定しているため、採用面接では以前より活用しています。
ただ配属やオンボーディング支援には、将来的な働き方までイメージできるSPI3 for Employeesがより適していると考えたのです。
(人事担当)
2022年の10月に、SPI3 for Employeesを内定者 に受検してもらいました。その後10月~12月に本人へライフキャリアプランについてのアンケートも行っています。SPI3 for Employeesの結果は本人にも開示し、面談を通してすりあわせをしながら、12月には職場決定というプロセスで実施しています。
新入社員の反応としては「自己理解ができて、気づきが得られた」や「自分自身と向かい合えた」と、前向きなものが多かったです。
就職活動で一通りの自己理解はしてきていると思いますが、さらに科学的なツールが加わったことで、人事と学生で共通のフレームを持つと共に入社後まで伴走できる心強さが増しました。
(人事担当)
学生の特徴が理解できたとしても、配属先の情報がないと最適なマッチングはできません。
そのため、現場の情報収集にも注力しました。各部署に配属された同期入社者に話を聞いたり、PE室(人事戦略室)の先輩社員からも情報を入手したりしました。さらに、社内インターンシップのような形で短期間の体験や、各職場の代表者にヒアリングをして、配属候補となり得る部署の理解を深めるようにしました。
そのようにして収集した各部署のリアルな情報と、本人に関する情報、そしてSPI3 for Employeesの結果をかけあわせて、配属を決めています。エビデンスがあることで、根拠を持って配属を決めることができ、また、データがあることで、配属後の仮説検証もできます。
(役員)
新入社員のスムーズなオンボーディングには、データを基に意思決定する「サイエンス」の観点が重要だと思っています。データがあれば「こういう特徴があるから、この人はこんなことにつまず くかもしれない」などの予想ができ、先手を打つこともできます。
一方で、サイエンスを補強するツールだけに頼っていては、真の配属成功はなし得ないと思います。
各個人の特徴がつかめないままSPI3 for Employeesの結果やデータだけを見た時に、ニュアンスがつかみきれないことがありました。データだけではなく、その人の実際の行動や面接でのコミュニケーション内容が加わることで情報化でき、より豊かに人物像が想像できると感じています。
SPI3 for Employeesは頼もしいツールではあるものの、それにリアルな情報と「想像する」という人が行うプロセスが加わることで、真の価値を発揮できるのだと、経験から考えています。
(役員)
仮説検証のプロセスを磨くことも含めて、今年も内定者へのSPI3 for Employeesは実施予定です。
今後は上司へのフィードバックも検討したいものの、前述したような「データの一人歩き」には注意したいと思っています。そのため、結果からの読み取りナレッジやその他の組織サーベイなどの情報で、オンボーディング制度を整えていく必要もあるでしょう。
今回は配属にSPI3 for Employeesを活用しましたが、常に私たちの根底にあるのは「学生から社会人になるのは、誰にとってもとても不安なステップだ」という想いです。
特に当社のようなBtoB企業は、学生には馴染みがないでしょう。それでも入社を決めてくれたことに感謝し、誠実に寄り添ってその不安を払拭できる取り組みがあれば、今後も貪欲にトライしたいと思っています。
さらに引いて考えると、学生はお金を払って教育を受ける立場ですが、社会人になるということは、お金を生み出す立場へと、真逆の立ち位置になると見なせるでしょう。社会人になるということは大きなトランジション(役割転換)です。その支援は当社だけではなく、世のなかの新卒採用全体で担っていくべきだと思っています。実際に、当社では採用面接で1人に対して10時間以上かけることもあります。「自社の採用」という枠を超えて、学生を社会へと送り出すキャリアカウンセリングの観点で行っているからです。
そのような真摯で誠実な姿勢で、社会人の一歩目の不安を払拭し、新入社員の可能性を開花させるチャレンジを今後も続けたいと思っています。