導入事例

時代変化に合わせた自律的キャリア開発
~複線型人事で職員の可能性を開花させる~

株式会社八十二銀行
目的・課題

一人ひとりの多様な可能性を引き出すため、複線型人事制度へ転換

職員の自律的なキャリア開発を支援するうえで、まずは自身を理解するためのツールが必要

SPI3の
活用方法

銀行特有の課題もオペレーションの工夫で乗り越え、全職員にSPI3 for Employeesの受検を実施

自身で結果を理解するだけでなく、1on1の場面で上司と一緒にキャリアを考えるうえでのコミュニケーションツールとしても活用

効果

職員一人ひとりのなかで自己理解が促進されている

また、共通言語ができたことで、職員同士で互いの個性や強みを理解し、尊重するようなコミュニケーションにつながりつつある

時代変化に合わせ、金融サービスも変革が迫られる

八十二銀行は1931年に発足しました。「健全経営を堅持し、もって地域社会の発展に寄与する」を経営理念とし、長野県のリーディングバンクとして地域への貢献を第一に営業しています。

私たちはそれぞれ営業店舗や従業員組合などでの勤務を経て、現在は人事部門の1 つである「キャリア開発グループ」に所属しています。ここは主に人材育成の企画や研修運営を担当する部署ですが、そのなかでも昨今は中期経営ビジョンと連動した人的資本経営の推進に注力しています。

当行では中期経営ビジョン2021のなかで「金融×非金融×リレーション」を中核にお客様と地域を支援する、という方針を掲げています。この中期経営ビジョンは、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった頃に策定を始めたのですが、実際にはコロナの影響だけではなく、デジタル化や気候変動問題など当行を取り巻く環境は大きく変化していました。そんななかでお客様の期待に真にお応えするためには、従来の金融仲介業だけではなく、新たな領域つまり非金融業にも挑戦する必要があると考えたのです。

金融仲介業ではない新たな領域に進出するためには、人材の転換が必要です。さまざまな事業や領域に対応できるよう、職員にはこれまでとは異なる考え方や専門性、リレーションが必要になります。また、そのような多様な人材を育成していくために人事も変わらなければいけないと考えました。

そのため、中期経営ビジョンを実現させるべく、中長期の人事方針も併せて策定しています。具体的には、人材育成方針として「自律的なキャリア形成を通じた自己実現と、経営戦略の遂行を通じた企業目的の実現を果たすため、職員一人ひとりの多様な価値観や持ち味を生かし、多面的な能力伸長を図る」「求められる人材の育成基盤として、彩り豊かな発想とお客さま志向にあふれる組織風土を醸成する」というものです。ただし、これらはゼロからつくり出したものではなく、以前から当行が掲げていた人材像「強みの確立」「進取の精神」「自ら考え行動する」とリンクしたものでもあります。

働き方の変化に合わせて、個人の多様性を生かす複線型コース

昨今、人材の確保は難しくなってきていると感じています。その影響もあって私たちとしては、一人ひとりの職員の力を最大限引き出すことが重要だと考え、すべての人材が当行のなかでやりがいを感じながら成長、活躍することを目指しています。具体的には弱み(苦手分野)ではなく、強み(一人ひとりの可能性や得意領域)を伸ばしていくように人材を育成しています。

また、変化という点では職員の働き方や価値観もますます多様化してきています。短時間勤務や男性の育休、ワーク・ライフ・バランスといった希望にも応えていくことが企業には求められています。

これらの変化を踏まえ、当行では一人ひとりの成長とやりがいを支える人事改革の一環として、人事制度をこれまでの単線型コース体系から複線型コース体系へと大幅に変更しました。これは、経営ビジョンを実現するためには人事も人の成長を支えられるよう改革をすべき、という私たち人事部の決意表明でもあります。

一人ひとりの可能性を引き出すためのツールの導入

複線型コース体系の人事制度への転換にともない、職員一人ひとりには自分 の進むべきキャリアを自ら考えていくことが求められます。なかには「自分には何が向いているのだろう?」と悩む人もいると思います。そんな時に本人が参考にしたり、上司がアドバイスに活用したりする、個人を理解できるようなツールがまずは必要だろうと考え、検討を開始しました。

ツール選定においては数社トライアルしました。そのなかでも、リクルートマネジメントソリューションズが提供しているSPI3 for Employeesは、変わりにくい性格面と、変化し得る志向の両面を測定できる点で良いと感じました。

自身のキャリアを選択していく際には、その時点でのモチベーションの方向性に加え、「向き・不向き」という変わりにくい部分も大いに影響すると思います。SPI3 for Employeesには、それらの情報が分かりやすく記載されていると共に、本人の自己理解促進に特化した専用の報告書もあるため、職員が自律的にキャリアを考えていくうえで役立つと考えたのです。

またツール選定時の他の観点としては、全職員が受けることを前提に、本人だけでなく、本人に対してアドバイスする役割を担う上司にとっても結果が分かりやすく、納得しやすいものである点も重視しました。

今回の複線型コース体系では、あくまで職員本人が自身の特徴を理解したうえでコース選択をしてもらいたいのですが、1 人では悩む場面もあると思います。そんな時に上司側も同じ結果を見ながら会話ができるものが理想だと考えていたので、その点でもSPI3 for Employeesは、私たちにとってぴったりなツールだったのです。

それらの点を踏まえ、最終的には人事部門内でのトライアルを経て結果の納得感への確信を高めたうえで、全職員へのSPI3 for Employeesの実施を決定しました。

全職員実施で現場業務を妨げない実施オペレーションの配慮

実施にあたってまず工夫した点は、職員にこの取り組みをスムーズに受け止めてもらうことです。

例えば、この取り組みが中期経営ビジョンの一環であることや、受検結果が人事評価には決してつながらないこと、自分自身への理解が深まることでのキャリア上のメリットについて事前に説明しました。

また、銀行ならではの実務的な工夫も多々あります。当行には「不正防止の観点で、職場を5営業日連続で離れなくてはならない」というルールがあり、また職種によって勤務形態や勤務時間帯もさまざまです。そのため、受検可能な期間は2週間とゆとりをもたせ、全職員が業務をしながら無理なく受検できることを目指しました。

そのほかに職員への通知方法など、さまざま工夫をする必要はあったのですが、一度方針が固まってしまえば今後の実施はスムーズになるため、将来に向けての土台づくりと捉えて実施していました。今後、育休者・出向者・新入社員などへの受検依頼を行っていく際にも容易に対応できる環境になったはずです。

人物特性をもとにした1on1ミーティングへと展開

オペレーションの工夫により無事に全職員3000名の受検は完了しましたが、その結果を受検者本人が受け止めるだけでは余すところなく理解することは難しいと思います。SPI3 for Employeesが示してくれる示唆を十分に咀嚼・昇華するには、日ごろから職員と共に働いている上司の助けが欠かせません。そこで、SPI3 for Employeesの実施と時期を同じくして始めた部下と上司での1on1ミーティングが、結果を理解するのに最も適している機会だと考えました。

ただ、いきなり1on1でSPI3 for Employeesの結果を読み解き、キャリアのアドバイスをすることを上司に求めるのは難しいと考え、上司向けの研修にSPI3 for Employeesの上司向け報告書を上手に活用するためのガイダンスを盛り込みました。そのなかでは例えば、報告書は「良い・悪い」で捉えるのではなく、あくまでその部下のモチベーションの源泉がどこにあるかを読み取りながら、それを生かすためのマネジメントが重要ですよ、といったアナウンスを行っています。

なお、当行では全職員がSPI3 for Employeesを受検したので、上司はタレントマネジメントシステム上で自身の結果も確認できます。上司からは、自身の結果と見比べながら1on1ミーティングに臨んだことで、「こんなに自分と違うのか!」「自分が知らなかった強みがあった!」など、さまざまな気づきがあったとの声をもらっています。

SPI3 for Employeesを共通言語とし、より自律的なキャリア開発が加速する風土形成へ

直近では1on1ミーティング以外の場面でも、SPI3 for Employeesを活用し始めています。例えば、キャリアカウンセリングなどでも活用しているのですが、こうした人材開発の場面では互いを理解することが重要になります。そんな時に、SPI3 for Employeesは職員同士の共通言語としての役割を果たし、互いの橋渡しになるのでとても有用だと感じています。

また、成果という点では、組織風土の変化の兆しも感じています。職員一人ひとりのなかで自己理解が促進されていくにつれ、SPI3 for Employeesという共通言語を介して職員同士で互いの個性や強みを理解し、尊重するようなコミュニケーションが自然と行われてきていると感じます。

SPI3 for Employeesという共通言語がなかったこれまででは、こうした個人や組織の変化は起こせなかったと思います。これからもSPI3 for Employeesの示唆を最大限活用していきたいと思っています。

当行のなかでの自律的なキャリア形成の推進は、あくまでスタート地点に立ったに過ぎません。これまでの「キャリアは与えられるもの」という視点から、「組織の制度を活用して自分で今後の歩むべきキャリアを考え、築く」という視点に職員全員が転換していくには、まだまだ人事部としてサポートすべきことがあると感じています。

職員一人ひとりが自らを理解し、強みを開花させ、当行の事業を通じて自らの描く理想のキャリアを歩み続けられるよう、私たち人事部も何ができるかを考え、実行し続けていきます。

人事部 キャリア開発グループ様 

株式会社八十二銀行

従業員数:
3,041名(2023年3月時点)
業種:
金融 
課題:
  • マネジメント
  • キャリア自律
  • 組織開発

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