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中途採用の担当者向け完全ガイド
新卒採用との違いから全体の流れまで
中途採用を実施する企業の割合は、コロナ禍で一次的な落ち込みはあったものの、全体として増え続けています。一方で「中途採用実態調査(2022年度実績、正規社員)」(リクルートワークス研究所)によると、半数以上の企業が必要な採用人数を確保できていない状況です。
有効求人倍率は、2010年頃から1を超え、採用市場は長年売り手優位の状況が続いています。要因としては、少子高齢化による労働人口の減少が大きいと考えられています。
終身雇用の崩壊とともに雇用の流動化が進んでいく中で、企業は激しい人材獲得競争に追われています。特に中小企業は戦略的に中途採用を進めないと、どんどん人材確保が難しくなっていくでしょう。
しかし中途採用は新卒採用と違い、決まったスケジュールがありません。手法も幅広いため「まず何から手をつけたらいいのかわからない」という担当者も多いのではないでしょうか。そこで当記事では、以下の流れに沿って中途採用でやるべきこと・考えるべきことを網羅的に解説します。
中途採用の流れ
1.採用計画
2.母集団形成
3.選考
4.内定後フォロー
5.振り返り
6.オンボーディング
この記事の内容を、そのまますべて実行する必要はありません。まずは全体像を把握し、必要に応じて何度も読み直しながら、自社の採用状況に合わせて参考にしてください。
INDEX
1.中途採用と新卒採用の違い
具体的な採用プロセスの解説に入る前に、中途採用と新卒採用の違いについて整理しておきます。同じ感覚で進めていると上手くいかないことが多いため、前提知識として両者の違いを理解しておくと良いでしょう。
大まかな傾向としては、以下のような違いがあります。(第二新卒など未経験の若手を採用する場合は、新卒採用に近くなります。)
より細かな違いに関しては、この後の各章で解説していきます。
1-1.中途採用と新卒採用のメリット・デメリット
中途採用と新卒採用それぞれのメリット・デメリットを以下のように整理することもできます。
この内容を頭に入れておくと、「そもそも中途採用をやるべきなのか」も判断しやすくなるかと思います。
中途採用と新卒採用の違いも踏まえて、ここから具体的な採用プロセスの解説を進めていきます。
2.採用計画
中途採用は新卒採用と違い、決まったスケジュールがありません。採用人数や要件も状況によって変わるため、どうしても場当たり的な対応になりやすいです。それが中途採用を成功から遠ざける要因のひとつになっています。
計画通り進めるのは難しい、と思う方もいるかもしれません。しかし、先のことを見据えて必要な準備をしておいたほうが、臨機応変に対応しやすくなります。だからこそ、中途採用でも計画を立てておくことが重要なのです。
ここでは「目標」「戦略」「体制」という3つの観点から、中途採用計画のポイントを解説します。
2-1.目標を立てる
「いつまでに」「どの部署・職種・役職で」「どれくらい採用したいのか」といった目標を立てます。
採用難易度が高い職種だと数年単位での長期戦を覚悟する必要があるかもしれませんし、採用手法によっては効果が出るまでに時間がかかるものもあります。そのため「直近で必要な人材の採用をどうするか」という短期的な視点と、「将来どんな人材を採用していきたいか」という長期的な視点の両方で目標を考えられると理想的です。
目標を立てるうえでは、「中途採用の目的」「採用人数」「予算」「スケジュール」の4点を考えることをおすすめします。
2-1-1.目的を考える
最初に考えるべきは、中途採用の目的です。たとえば欠員の補充と事業拡大のための増員では緊急度が異なるように、採用の目的によって人数・要件・スケジュールなどが変わってきます。
現場の社員に近い即戦力の人材を採用して人手不足を解消したいのか、今までにない人材を採用して新しい知見や感覚を取り込みたいのか、将来を見据えて若い世代を増やしておきたいのか、といった様々な目的があるはずです。
各部門の現場社員、人事、経営者、それぞれが別々の目的を持っていることもあります。その認識を社内で揃えて整理しておかないと、中途採用活動の進め方にもズレが出てしまいます。
2-1-2.採用人数を考える
次に職種や役職ごとに「中途採用で何名を採用したいのか」を考えます。もちろん最終的に目標通りの人数になるとは限りません。しかし採用人数によって必要な期間や取るべき手法が変わるため、目標を立てておくことは重要です。
目標があれば、突発的な欠員が発生した際にも、そのぶん採用のペースを上げないとマズいのか、順調に進んでいるから問題ないのか、目標と現状を照らし合わせて判断しやすくなります。
採用人数には、トップダウンとボトムアップの2つの考え方があります。トップダウン方式は、経営計画や事業戦略をもとに人件費と採算のバランスを見て人数を算出します。ボトムアップ方式では、現場の業務量に合わせて必要な人数を算出します。
短期的にはボトムアップで考えて、長期的にはトップダウンで考えるなど、経営と現場の両方の意向を汲んで現実的な着地点を検討していけると良いでしょう。
2-1-3.予算を考える
就職みらい研究所「就職白書2020」の調査によると、中途採用にかかる平均コストは一人あたり103.3万円となっています。どんな人材を採用するかによって中途採用の単価は大きく変わりますが、最低限これくらいかかる可能性があると認識しておくと良いでしょう。
人材紹介(転職エージェント)では、入社時年収の25~35%程度が成功報酬の相場です。これも採用予算を検討する際の、ひとつの基準として考えられます。
一概に「これくらいの予算が適正」とは言えませんが、予算によって選べる手法やスケジュール感は変わります。基本的には予算を抑えるほど採用できる可能性が下がって時間がかかるようになり、予算をかけるほど短期間で採用できる可能性が高まります。
「どの人材の採用」なら「どれくらいの予算をかけられるか」という観点で大まかな全体方針と予算配分の優先順位を決めておけると良いでしょう。
2-1-4.スケジュールを考える
中途採用は、新卒採用と違って決まったスケジュールがありません。そのため採用目標から逆算して、いつ何をすべきか考える必要があります。
「欠員補充などのために直近どう動くか」という短期的な視点と、「将来的な人員拡大などを見据えて何をしておくか」という長期的な視点の両方でスケジュールを検討できていると、採用活動が進めやすくなります。
募集開始からどれくらいで採用できるかは、採用要件や手法によって様々です。早ければ数週間で決まることもありますし、半年から1年以上かかることもあります。採用難易度の高い職種であれば、スケジュールを組むうえで長期戦の覚悟が必要となるでしょう。
そこまで優先度は高くないですが、できるだけ求職者の転職活動が活発になる時期に募集のタイミングを合わせられると、より理想的です。一般的には、期の節目である4月と10月での入社、もしくは夏・冬のボーナス支給後の退職を目指す人が多いと言われています。求人媒体など掲載期間が決まっているものは、このようなタイミングと合わせることで多くの求職者と出会いやすくなるはずです。
2-2.戦略を立てる
目標を決めたら、「どのような人材を」「どうやって採用するのか」の戦略を立てます。
本当のゴールは採用人数の充足ではなく、自社で活躍・定着できる人材に入社してもらうことです。そのためには、「どんな人が自社に必要なのか/適しているのか」を考える必要があります。
中途採用は売り手市場が続いて、競争も激しくなってきています。自社の魅力や他社との違いを明確にしないと、求職者を惹きつけるのは難しいでしょう。
「自社にそんな魅力はないんじゃないか」と考えている方もいるかもしれません。しかし、社員がひとりでもいる限り、「求職者が入社を決めた理由」は必ず存在します。
そうした採用活動の前提となる情報を集め、「誰に」「何を」「どうやって」伝えるかの順で整理して戦略を立てる方法をここから解説していきます。
2-2-1.現状の課題を分析する
採用活動は自社の事業や組織と密接に結びついています。たとえば「新規製品の開発が上手くいっていない」「社員の高齢化と硬直化が進んでいる」などの事業課題・組織課題がわかれば、必要な人材の要件も見えてくるはずです。そのうえで過去の採用活動を振り返って採用上の課題も抽出しておくと、どう乗り越えていくか戦略を立てやすくなります。
2-2-2.調査する
採用担当者の頭だけで考えていると、実際の求職者や現場のニーズとのズレが生まれてしまいがちです。せっかくターゲットを定めても、そんな求職者が世の中には存在しなかったり、現場が求めていない人材になっていたら意味がありません。
だからこそ、できる限り調査しながら戦略を立てていくことが重要です。企業に依頼するような本格的な調査ではなくても、身近な社員に話を聞いたり、インターネットで調べたりするだけでも意味はあります。
ここでは3つの観点から、調査の方法を紹介します。
① 社内リサーチ
中途で入社した社員は、自社に適した求職者に最も近い存在です。そのため社員の転職活動時の考え方や行動は、貴重なヒントになります。社内でアンケートを取ったり、何名か選んで話を聞くだけで、非常に有用な情報が集まります。過去の面接のメモなども参考になります。社員が適性検査を受けている場合は、その結果から「どんな能力や性格を持った人材が社内には多いのか」の傾向を掴むこともできます。
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② 競合リサーチ
中途採用では、求職者の現職の企業も含めて、ほぼ必ず他社と比較されます。自社が選ばれるには、他社との差別化が重要です。だからこそ、競合となる企業がどんな戦略で何をしているか調べて分析する必要があります。競合他社が求人媒体に掲載している情報や採用サイトの内容を見れば、「どんな人をターゲットにして」「何を強みとして打ち出しているか」など推測できるはずです。ただし同業他社が採用における競合とは限らないため注意しましょう。社員や過去の応募者が、転職活動で他の候補にしていた企業を聞いておくと、本当の採用競合を知ることができます。
③ 市場リサーチ
中途採用市場の全体的な傾向やトレンドを把握しておくことも重要です。求職者が企業に求める条件や転職活動の手段は常に変化します。中途社員から転職活動時の話を聞くのは大事ですが、その当時と現在で求職者の考え方や行動の傾向が変わっている可能性には注意しなければなりません。採用したい職種の転職市場における希少性や、自社が位置する業界の動向なども採用活動に影響するため、キャッチアップしておくといいでしょう。市場について調べるには、厚生労働省の「転職者実態調査」など公的な調査データと、リクルート就職みらい研究所の「就職白書」など民間の調査データの両方に目を通してみることをおすすめします。
2-2-3.ターゲットを決める
対象者が学生に限られる新卒採用と違って、中途採用は非常に幅広い人材が対象になるため、狙いを明確にすることが特に重要です。「どんな人材を採用したいのか」によって「何を」「どのように伝えていくべきか」も変わります。ターゲットについて検討した内容は、募集時だけでなく選考の基準にもつながっていきます。
考え方は様々ありますが、ここでは4つの観点での検討方法を紹介します。いずれにしてもリサーチの内容などを参考にして、机上の空論にならないようにしましょう。
① 採用要件
まずは、能力・経験・適性に関する採用要件を考えます。それにはジョブディスクリプションを作成するのが効果的です。入社後のポジション、目標・ミッション、業務内容、求められるスキル・資格などを整理すると、そこから採用要件を考えやすくなります。ただし要件を増やしすぎると、採用のハードルが上がってしまいます。入社時に必須の内容と、育成でカバーできる領域を見極めてバランスを取ることが重要です。
② 求める人物像
性格やポテンシャルなど、もう少し抽象的な内容の要件も考えます。この観点でマッチしていないと、経験・スキルは十分でも早期退職につながりやすくなります。また第二新卒や未経験者の採用はスキルで差が出にくいため、特に性格や適性でのマッチングが大事です。「成果が出るまで時間がかかるから粘り強さが必要」「困ったら周りにすぐ相談できる」など背景や具体的な行動まで言語化することで、求職者にとっても採用担当者にとっても判断しやすい基準になります。全員に共通する内容と、職種や役職によって変わる内容を整理しておくと、新しく募集を出す際にも効率的に考えやすいです。
③ ペルソナ
ペルソナとは、採用要件や求める人物像を架空のプロフィールに落とし込んだものです。ターゲットをひとりの人間として考えることで、「この人ならこう考えるだろう」「こんな情報が欲しいだろう」と想像したり、社内で認識を共有しやすくなります。
設定する項目の例は、以下のようなものが挙げられます。
● 前職の業務内容
● 保有スキル・資格
● 性格
● 得意なこと
● 苦手なこと
● 仕事・職場に求めるもの
● 現状の不満
● 転職活動の軸 など
ペルソナを設定する際は、理想の人物になりすぎないよう注意しましょう。見本となる社員がいるなら、その人のプロフィールを土台にするのもひとつの手です。
④ 行動(ジャーニーマップ)
ジャーニーマップとは、転職活動中のターゲットの行動を「転職の準備→情報収集→応募→選考→内定」などの流れに沿って整理したものです。各タイミングでの「企業との接点」「求職者の気持ち」「求められる情報」などをまとめます。ターゲットの年齢やキャリアによって「転職サイトを使って早めに決めるのか」「リファラルなどでじっくり探すのか」など転職活動の進め方は変わってきます。ターゲットの行動を整理することで、求職者への情報提供の内容やタイミング、選考での動機の仕方などを検討しやすくなります。情報源としては、調査の項目で調べた内容をベースにします。
2-2-4.自社の魅力を整理する
どのような人材を採用したいか決めたら、その人に何を伝えたら応募・入社してくれそうか考えます。
当たり前ですが、求職者に選んでもらうには「入社する価値がある会社」だと感じてもらわなければなりません。特に中途採用の場合は、入社後に身につくスキルや経験などがキャリアにどう影響するのかが重要になってきます。もし待遇面が不利だと予想される場合は、それをカバーできる要素が必要です。
自社の魅力を考えるうえでは、実際に入社した社員の声が最大のヒントになります。まずは社内アンケートやヒアリングをもとに、できるだけたくさんの要素を集めると良いでしょう。そこから「我々は~できる」という会社目線の内容は、「入社したら~できる」という求職者目線の言葉に変換していきます。自社の魅力となる要素に加えて、魅力の根拠となる制度やエピソード、競合とは異なる自社独自の価値なども収集しておけると良いでしょう。
2-2-5.アプローチ方法を考える
「どんな求職者に」「何を伝えるか」まで決まったら、それを「どう伝えるか」考えます。この項目について詳しくは「母集団形成」の章で説明します。
2-2-6.選考プロセスを設計する
求職者からの応募を集めたら、次は選考に進みます。選考における応募者の見極めと動機付も、採用を成功させるうえでは重要な要素です。この項目についても、詳しくは「選考」の章で説明します。
2-2-7.内定後フォローを設計する
中途採用は、内定を出して終わりではありません。多くの求職者は、複数の企業の選考を並行して受けています。そのため最終的に選んでもらうためのフォローが必要です。詳しくは「内定後フォロー」の章で説明します。
2-3.体制を作る
目標設定・戦略設計とあわせて、採用活動の体制づくりも進めます。担当者ひとりで中途採用の膨大なタスクをこなすのは非常に困難です。特に中途採用の場合は、募集職種の仕事を最も理解している現場の社員にコミットしてもらったほうが上手くいく傾向にあります。社内外で協力者を集めて採用活動の体制を作るのも、担当者の大事な仕事のひとつだと考えておくと良いでしょう。
ここでは中途採用の主な関係者と、それぞれの役割を解説します。
2-3-1.採用担当者
採用担当者は、中途採用活動の中心となる存在です。役割は非常に幅広く、採用の戦略設計から、社内外との調整、求職者とのコミュニケーションまで担当します。これら全てをこなす能力を持っている人が採用担当としては理想ですが、現実的には複数人で分担できると良いでしょう。
2-3-2.面接者
中途採用の面接では、採用要件や業務内容への理解度が高い現場の社員に参加してもらうことが多いです。主に募集先の部門から「求職者の能力や性格を見極める能力があるか」「求職者に仕事や職場の魅力を伝えられるか」という観点で面接者を選ぶと良いでしょう。
2-3-3.経営者
経営者は、採用活動が自社の経営方針とズレていないかを確認したり、場合によっては選考における最終判断の役目を担います。経営者の存在は重要ですが、あまりにも面接で全面に出ると、同席する社員や求職者が萎縮してしまう可能性があります。また採用に関して経営者の意向が強すぎると、現場とのミスマッチが生まれることがあるため注意が必要です。
2-3-4.リクルーター
リクルーターとは、選考から内定まで求職者と継続的にコミュニケーションを取って採用活動をサポートする役割を担う社員のことです。基本的には採用担当者、もしくは求職者に近い感覚を持った現場社員が担当します。求職者の悩みに共感したり、相談に乗りやすいよう、一人ひとりの特性に合わせた社員をアサインできると良いでしょう。
2-3-5.パートナー企業
中途採用には、自社だけでは対応しきれない領域も多くあります。採用活動の目的や状況に応じて、以下のような各領域を支援してくれるパートナー企業との連携が必要です。
採用活動を支援する企業の種類
● 採用コンサルティング
● 面接官トレーニング
● 採用業務の代行
● 採用管理システムの提供
● 求人媒体の制作・掲載
● イベントの開催
● 採用ツールの制作
パートナー企業に協力を依頼する際は、相手の専門家としての意見も尊重しつつ、丸投げにはならないよう、対等な関係を築けるとスムーズに進めやすいです。
3.母集団形成
「母集団形成」とは、自社の選考に進んでくれる求職者を集めることです。
母集団は一定の数を担保する必要がありますが、多ければ多いほど良いわけではありません。採用基準に合わない応募が増えると、選考に関わる現場社員の負担も大きくなってしまいます。
目指すべきは、ターゲットに近い人材から可能な限り多くの応募を集めることです。そのためには、自社を知ってもらい、応募してもらうための導線設計と情報提供が必要となります。
ここでは母集団形成の代表的な手法を紹介します。
3-1.母集団形成の手法
母集団形成の手法は様々ありますが、予算や手間を考えると手当たり次第に試すことはできません。各手法の特徴を把握して、使い分けることが大事です。社員や内定者から聞いた話を参考にして、実際にターゲットとなる求職者と接触しやすそうな手法を優先的に選びましょう。
3-1-1.転職サイト
中途採用の求人が集まる転職サイトは、若手~中堅を中心に多くの求職者が利用しているため、たくさんの求職者に短期間で接触しやすいのがメリットです。特定の職種・業界や若手の採用などに特化した転職サイトを使えば、ある程度は対象者を絞ることもできます。
一方で、掲載している企業が多いため、自社の求人が埋もれてしまうリスクもあります。基本的には掲載する時点で料金が発生するため、採用できたかどうかに関わらず一定のコストがかかることにも注意が必要です。
3-1-2.人材紹介(転職エージェント)
人材紹介は、紹介会社のエージェントが自社に合った求職者を探して紹介してくれるサービスです。成功報酬型で無駄なコストが発生しないこと、採用基準に合わない求職者からの応募を減らせることが大きなメリットとなります。また人材紹介では、求職者がエージェントから紹介されて初めて、その企業を知ることも多いです。そのため知名度に関わらず求職者との接点を作りやすいという利点もあります。
一方で、1人を採用する度に成功報酬がかかるため、採用人数が増えるほどコストはかさみます。対象となるのが、その紹介サービスに登録している求職者に限られるのも弱みです。
3-1-3.求人検索エンジン
求人検索エンジンとは、求人情報だけを集めた検索エンジンです。ウェブ上にある求人情報は自動で検索結果に表示されるようになっているほか、検索エンジンに求人情報を投稿することもできます。
無料で求人を掲載することが可能で、クリック率などデータ分析もできるため、上手く活用すれば採用コストを抑えられます。一方で、膨大な数の求人情報がヒットするため、求職者に見つかりやすくするためには、上位表示のための課金や専門的なマーケティングの知識が必要となる場合も多いです。
3-1-4.スカウトサービス
スカウトは、企業側から求職者に対してアプローチする手法です。転職サイトや人材紹介会社などの登録者から、企業が設定した条件に合致する人へ一斉にスカウトメールを送ります。
自社の採用要件にマッチした人材に絞り込める点と、積極的に転職活動をしていない潜在層にもアプローチできる点がメリットです。ただし元々は自社に興味を持っていない相手に送るため、条件の設定や文面の内容によっては、なかなか応募につながらない可能性もあります。
3-1-5ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングは、企業側からアプローチするという点でスカウトサービスに近い手法です。ただし条件に合わせて一斉にメールを送るのではなく、対象者の情報を見て個別に連絡します。
スカウトよりもさらに採用要件に合った人材に対象を絞りやすく、一人ひとりに合った内容でアプローチすることで応募につながる確率も高めやすいというメリットがあります。一方で、対象者の情報を確認して一通一通メールを作成する必要があるため、担当者には大きな負担がかかります。
3-1-6.ヘッドハンティング
他社で活躍している優秀な人材を、直接勧誘するのがヘッドハンティングです。特定分野のスペシャリストや経営層などハイキャリアの採用で主に用いられます。
そもそも転職活動中ではない人材にアプローチできること、外部には知られないよう水面下で採用を進められることが、ヘッドハンティングを活用する大きな利点です。一方でヘッドハンターに依頼する場合は採用コストが高くなり、リサーチや交渉にも時間がかかります。そのためターゲットとなる人材の母数が少なく、採用難易度が高いと予想される場合などに利用するとよいでしょう。
3-1-7.SNS
特に若い世代では、転職活動においてもSNSを用いて情報収集を行っています。SNSは求人情報よりもリアルな職場の様子や社員の姿を見せやすく、それが企業にとっても求職者にとっても魅力となっています。利用自体にかかるコストが低く、上手く拡散すれば広い層に届けられるのも利点です。
ただし即効性には欠けており、効果が出るまで発信を継続するのは容易ではありません。また企業アカウントよりも社員個人のアカウントのほうが、他のユーザーとのつながりや反応を得やすい傾向にありますが、発信内容はコントロールしにくくなるため注意が必要です。
3-1-8.広告
転職サイトへの求人掲載も広告と言えますが、テレビCMなどのマス広告やWeb広告を中途採用に活用することもできます。マス広告は、まだ転職活動を本格的に始めていない潜在層にも情報を届けて、認知拡大を狙えることがメリットです。
一方で、大きなコストに対して直接的な応募につながる可能性は高くありません。Web広告も単体では効果が出にくいことがあるため、自社の求人を見た人にターゲティング広告を出して印象を強化するなど、上手く他の手法と組み合わせられると良いでしょう。
3-1-9.オウンドメディア
オウンドメディアとは自社が保有するメディアのことで、多くの場合は自分たちで管理・更新できるブログ型のウェブサイトを指します。
転職サイトなどと違って、掲載料金がかかることもなく、文字数の制限もないため、自由に情報を発信できます。内容によっては潜在層にアプローチすることも可能です。しかし、すぐに効果が出ないことも多いため、十分な量のコンテンツが揃うまで長期的な視点を持って取り組む必要があります。
3-1-10.イベント
採用イベントは内容や規模によって期待できる効果が変わるため、自社の目的に合ったものを選ぶ必要があります。
大規模な合同説明会では、多くの求職者と接触できる可能性がありますが、出展費用や準備にコストがかかり、自社が埋もれてしまうリスクも高いです。業界や地域に特化した中小規模のイベントは、採用要件に近い求職者にマッチしやすいですが、来場者が少ないため認知拡大には向きません。
また、交流会(ミートアップ)や勉強会(セミナー)など別の目的でイベントを開催し、そこから採用につなげていくという方法もあります。
3-1-11.カジュアル面談
カジュアル面談は、求職者と企業が基本的には1対1でリラックスしながら話す場です。求職者側の質問に答えながら、お互いに理解を深めることで、応募前の不安を払拭したり、転職の意思が固まった際に自社を思い出してもらえるようにします。
ただし、あくまでも面談は求職者の関係を深めて応募の後押しをする施策ですから、自社を認知してもらうための手法は別に用意する必要があります。またカジュアル面談は選考の場ではなく、その時点では自社への応募意思を持っていない人が対象になることもあるため、志望動機を聞くなど相手を見定めるようなことはしないよう注意しましょう。
3-1-12.リファラル
社員の知人を採用候補者として紹介してもらう手法をリファラル採用と言います。「自社に合っている」と社員が判断した人材のためミスマッチの可能性が低く、候補者側も知人がいて信頼できることから入社意向が高まりやすいのがメリットです。紹介した社員に報酬を出すにしても、他の手法よりコストを抑えられます。
一方で、そもそも社員が知人に紹介したいと積極的に思える職場でないと上手くいかず、決まった期間で確実な効果を出すのは難しいです。また知人という先入観で判断に偏りが生まれたり、選考を通過しなかった場合に人間関係を悪化したりしないよう配慮する必要もあります。
3-1-13.アルムナイ
「アルムナイ(alumni)」は「卒業生・同窓生」を意味する英語です。採用においては、過去に自社を退職した人のことを指します。アルムナイ採用を行う最大のメリットは、すでに一度自社で働いていることからミスマッチの心配が少なく、再び即戦力として活躍できる可能性も高いことです。
ただし社員が円満に退職し、また戻ってきたいと思える職場でなければ、アルムナイ採用は機能しません。一度退職した社員に対して、現職の社員がネガティブな印象を抱くこともあるため、実施する際には社内への丁寧な説明も必要です。
3-1-14.タレントプール
タレントプールとは、過去に選考して採用に至らなかった人や、自社の採用イベントに参加した人など、採用の候補者となる人材の情報を蓄えるデータベースのことです。タレントプールを活用することで、自社にマッチした人材と継続的にコンタクトを取りやすくなります。タイミングが合わず応募に至らなかった求職者にも、一旦タレントプールに登録しておいてもらえば、条件に合った募集が始まったときに連絡して応募を促すことができます。
ただし、あくまでタレントプールはデータを蓄積する場所ですから、他の手法との組み合わせが前提です。採用候補者の数がそこまで多くないのであれば、効果に対して管理の手間が見合わない可能性もあります。
3-1-15.ハローワーク
ハローワークは公共の就労支援機関のため、求人を掲載するのに一切の費用がかからないことが最大のメリットです。他の手法と並行しながら、長期間にわたって掲載し続けることもできます。利用者も総数としては多いため、たくさんの求職者の目に触れる可能性があります。
一方で、基本的には管轄地域の求人しか紹介されないため、他の地方から広く応募を集めるのには向いていません。利用者の年齢や経歴が非常に幅広く、特定の経験やスキルを持った人材と狙って出会うことも難しいです。また求人に掲載できる情報量も少ないため、どうしてもミスマッチの可能性は高くなります。
3-1-16.人材派遣
中途採用の一環として、人材派遣を活用するという方法もあります。人材派遣を使えば、中途採用よりも早く一時的な人手不足を解消でき、実際の働きぶりを見たうえで直接雇用することもできます、
ただし特殊な業務や難易度の高い業務を任せることは難しく、人材派遣で対応できる職種はある程度限られています。また派遣された人材を直接雇用する場合は、派遣元の企業に対して一定の手数料を支払う必要がある場合が多いです。
3-2.母集団形成に使えるツール
母集団形成においては、求職者に情報を伝えるために準備しておくと良いものがあります。ここでは代表的なツールをいくつか紹介します。
3-2-1.採用サイト
採用サイトでは、自社に関する情報を文章や写真などで自由に発信できます。求職者と最初に接触する転職サイトなどの求人票より詳しい情報を載せておくことで、応募の意向を高められます。選考中や内定後などに採用サイトを見て、情報を再確認する求職者も多いです。ただし採用サイトはあくまでも受け皿であり、求職者にアプローチするための手段は別に必要になるので注意が必要です。
3-2-2.採用ピッチ資料
採用ピッチ資料とは、会社の事業や働く環境など採用に関する情報をひとつのスライドにまとめたものです。これを作成しておくと、採用サイトに掲載したり、イベントで投影したり、選考中の求職者にメールで送ったり、転職エージェント向けに共有したりと、様々な場面で活用できます。
3-2-3.採用パンフレット・入社案内
採用パンフレットや入社案内は、制作や印刷にコストがかかるわりに、オンラインでの採用活動が増えて渡す機会がなくなってきたため、近年では利用する企業が減ってきています。一方で、あまり他の企業がやっていないからこそ、あえて紙のパンフレットを渡すことで熱意を伝えたり、強い印象を残すことができるかもしれません。
3-2-4.動画
会社紹介の動画を用意すると、文章や写真では伝えにくい社内の雰囲気などを効果的に見せることができます。撮影・編集に手間はかかりますが、一度作ってしまえば自社の採用サイトに掲載したり、説明会で流したりと、繰り返し活用できます。ただし動画は効率的な情報収集に向かないため、求職者によってはそもそも見ないケースもあります。
4.選考
母集団形成によってエントリーを集めたら、選考に移ります。
選考の主な目的は「見極め」と「動機づけ」の2つです。見極めができていないと、本当は自社で定着・活躍できない人材に内定を出してしまうかもしれません。動機づけが上手くいかないと、求職者から辞退されてしまう可能性があります。
そうならないために、ここでは選考で考えるべき内容と主な手法をお伝えします。どんな選考をすべきかは企業によって異なるので、自社に合わせて考えてみてください。
4-1.選考で考えるべきこと
選考において企業側が考えておくべきことは、いくつかあります。最低限、押さえておきたいのが以下の4点です。
4-1-1.選考基準
候補者の何を確認し、どのような人に通過してもらうかの基準を決めておかないと、選考の判断がすべて担当者の主観になってしまいます。そのため採用要件として決めた内容をベースにして、選考内容に合わせた具体的な判断基準を用意します。全員に共通する基準と、職種や役職によって決める基準をそれぞれ設けておくと良いでしょう。
4-1-2.プロセス
限られた時間で候補者について深く理解し、自社に合うかどうかを確認するのは非常に難しいです。そのため角度を変えて何度か選考を通じてコミュニケーションを取り、様々な観点から候補者について理解を深めていきます 。回数を重ねるごとに、求職側の理解度や志望度も高まっていきます。一方で、選考プロセスが長すぎると両者にとって負担になるため、バランスも重要です。こうした観点を踏まえて、どの段階で何を見たいかによってプロセスを考えます。具体的には後の「選考の手法」の章を参考にしてください。
4-1-3.担当者
選考は採用担当者や人事が行うケースもありますが 、中途の場合は、基本的には募集している部門の社員に参加してもらったほうが良いでしょう。なぜなら、どんな人材が欲しいのか一番わかっていて、候補者とも深い話ができるからです。終盤に近い選考では、必要に応じて経営者・役員・人事部長などにも協力してもらいます。人事の採用担当は、選考プロセス全体の設計と統括を行います。
4-1-4.候補者の管理方法
中途採用は複数の募集が並行して進み、様々な媒体を活用するため、選考ステータスの管理が複雑になりがちです。連絡のミスや遅れは候補者の印象を損ねてしまうため、可能な限り避けたいものです。管理シートを作成したり、連絡メールをテンプレート化するなどして、できるだけ効率化しましょう。候補者の数が多くて管理が大変であれば、専用の採用管理システム(ATS)を導入するのもひとつの手です。
4-2.選考の手法
中途採用だと、書類選考と面接のみ実施している会社も多いです。しかし、候補者の能力や適性を見極めるには、それだけだと難しい場合もあります。
ここでは代表的な手法をいくつか紹介します。ターゲットに求める能力や選考基準に合わせて、組み合わせてほしいと思います。
4-2-1.書類選考
応募時に求職者から提出された履歴書・職務経歴書や、転職サイトに登録された情報をもとに選考します。情報が多いほど選考しやすくなりますが、求職者の負担が増えて応募のハードルが上がるため、どこまで情報提供を求めるかは注意が必要です。
書類選考では、応募者の経歴や資格などを見て、最低限の採用基準に達しているかをチェックします。書類から得られる情報量はそこまで多くありません。応募者の数や採用担当者の余裕にもよりますが、明らかにミスマッチな場合を除いて、迷ったなら面接で改めて判断することをおすすめします。
4-2-2.面接
面接では、書類選考の内容を参考にしながら候補者の経歴や価値観をさらに深掘りして、自社に適した人材か見極めます。質問に対する回答の内容だけでなく、受け答えの仕方や立ち振る舞いなどもよく観察して、感覚的にもマッチしているか確認します。
また、面接は候補者と直接話して入社への動機づけができる貴重な機会でもあります。企業側から一方的に質問するだけで終わらず、会社紹介の時間を設けたり、候補者からの質問に答えたりして、お互いに理解を深められるようにしましょう。
面接は当たり前に行われる選考手法であり、なんとなく現場の社員任せで実施されているケースも見られます。しかし「見極め」と「動機づけ」の両方ができる非常に重要な選考プロセスであることを忘れてはいけません。
内容の自由度が高く、そのぶん迷いやすくもあるため、事前に面接の目的を再確認して進め方を考えておくのが大事です。
4-2-3.スキルテスト
ITエンジニアなど職種によっては、書類選考と面接で求職者の能力を判断するのが難しいことがあります。そうした場合は、実務に近い内容で候補者の知識や技術を問う課題を作成し、受験してもらいます。
どんな能力が求められるかは企業によって異なるため、基本的には自社で独自の課題を作成することが多いです。難易度が低すぎても高すぎても選考には活かしにくく、候補者に負担をかけすぎると意欲低下にもつながるため、いろいろな内容を試して改善していきましょう、
4-2-4.適性検査
適性検査では候補者の能力特性や性格を数値で測ることができ、履歴書・職務経歴書だけでは気づけなかった適性や面接で確認すべきポイントがわかります。客観的なデータで見られるため、他の候補者と比較しやすく、選考の担当者同士でも共通の認識で議論しやすいのがメリットです。
補助資料としても有用で、選考中・内定承諾前・入社後などにおいて、その人の性格に合わせた動機づけのコミュニケーションが取りやすくなります。また社員が適性検査を受検していると、会社全体や部門ごとの傾向が見えるため、採用要件を考える際のヒントにもなります。
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4-2-5.リファレンスチェック
リファレンスチェックとは、候補者の経歴について現職(前職)の同僚や上司に問い合わせる調査のことです。企業が自ら実施することもあれば、外部のサービスに委託することもあります。
候補者から伝えられた内容に虚偽や誇張がないか確認することで、よりミスマッチの可能性がないか慎重に判断できます。ただし候補者が転職活動を現職の社内で公にしていない場合などもあるため、実施する場合は必ず合意を取りましょう。
5.内定後フォロー
中途採用は、内定を出して終わりではありません。多くの求職者は複数社の選考を受けて比較検討しています。改めて考えた結果、現職に留まるというケースもあります。そのため選考が終わった後も、内定者が安心して入社まで進めるよう継続的なコミュニケーションが必要です。
また内定者が納得して意思決定できているかどうかは、入社後のモチベーションにも影響します。内定辞退の防止だけでなく、入社後のギャップによる早期退職を防ぐという観点も重要です。
ここでは内定後フォローでやるべきことと、具体的な手法を紹介します。
5-1.内定後フォローでやること
内定後フォローで大切なのは、求職者ができるだけ具体的に自分の入社後をイメージし、納得したうえで内定を承諾できるようにすることです。そのためには、自社にとってポジティブな内容だけでなく、現実的な話も伝える必要があります。
5-1-1.労働条件をすり合わせる
給与・就業時間・休日休暇・配属部署・業務内容など労働の条件を内定者に提示して、問題がないかを確認します。選考や面接の際に話す機会があったとしても、改めて丁寧に説明しましょう。給与や入社日については、内定者と交渉になる可能性もあります。ここで認識にズレがあるとトラブルの原因になるため、お互いが納得いくまで話し合うことが大事です。
5-1-2.内定者の不安を解消する
内定者が選考を通じて得られる情報には限りがあり、内定先について完全には理解しきれていない場合がほとんどです。そのため内定者は入社して本当に活躍できるのか、働き方や文化は自分に合うのか、など様々な不安を抱えています。その不安をできる限り解消することが何よりも重要です。できるだけ内定者の質問に答えるなどして、不安を解消する機会を作りましょう。
5-1-3.社員とのつながりを作る
仕事内容や職場環境だけでなく「どんな人と一緒に働くことになるのか?」という部分に不安を感じている内定者も多いです。面接に参加した社員だけでなく、他の社員とも話す機会を作ることで、その不安を軽減できます。先輩社員とのつながりができると会社への思い入れが強くなりますし、入社後の人間関係の構築もスムーズになるでしょう。
5-2.内定フォローの手法
5-2-1.オファー面談
オファー面談は、基本的には企業から内定通知を出したあとに実施されます。労働条件のすり合わせ、改めて業務内容や配属部署の説明、内定者の疑問解消などを行い、最終的に入社意思を確認します。
内定者にとって入社先の決定は非常に重要な問題ですから、その場では決断できないことも多いです。なんとか内定辞退を避けたい気持ちがあるかもしれませんが、入社を迫ってプレッシャーをかけることなく、持ち帰って検討できる猶予を持たせて返答を待ちましょう。
5-2-2.職場見学
内定者が職場の様子や雰囲気を知りたいようであれば、見学の機会を設けます。近年は選考がオンラインで完結して、実際のオフィスを見ないまま内定が出るケースもあるため、意外と職場見学のニーズはあります。
職場を見学してもらう際には、あわせて業務について説明して理解を深めてもらったり、先輩社員に案内を依頼して関係性を築けるようにすると良いでしょう。
5-2-3.懇親会
面接やオファー面談では真面目な話が中心になるため、人となりは見えにくいことも多いです。ランチ会や懇親会などカジュアルに話せる場を設定すれば、よりお互いについて深く理解するきっかけになります。会社によっては、社内イベントに内定者を招待するケースもあります。より多くの社員に会ってもらいたい場合は、そうした形を取るのもひとつの手です。
5-2-4.フォローメール
オファー面談や職場見学を実施するだけでなく、並行してメールなどで継続的にコミュニケーションを取ることも重要です。内定を出したあと、連絡が途絶えると内定者は不安に感じるため、定期的に連絡して今後の流れを伝えたり、不安や相談事項がないか確認すると良いでしょう。
6.振り返り
採用活動が一通り終わったら、必ず振り返りを行います。振り返って得た学びを次の採用活動に活かすことで、だんだん洗練されていきます。上手くいかなかったときはもちろん、上手くいったときもそれを再現できるよう振り返りましょう。
ただし中途採用は新卒採用と違って決まった区切りやサイクルがあるわけではありません。採用活動が絶えず続いたり、並行して進んでいくことも多いです。そのため現実的な範囲で、タイミングを決めて振り返ることが大事です。
ここでは「数」と「質」の2つの観点から、主な振り返りの手法について解説します。また振り返りをする際には、「成果」と「プロセス」に着目すると示唆を得やすいです。
6-1.「数」の振り返り
応募者や内定者などの「数」は客観的な事実であり、「目標を達成できたか」「前年度や全体平均と比較してどうか」などの分析がしやすいです。一方で「なぜそうなったのか」は読み取れません。そのため「数」をもとに仮説を立てて、「質」の観点で深掘りすると良いでしょう。
主な手法は、以下の2つです。
6-1-1.チャネル分析
主に母集団形成において、転職サイトやエージェントなど、どのチャネル(経路)からどれくらいエントリーがあったかを分析します。エントリー数だけでなく、チャネルごとの選考通過率や内定承諾率まで追えると理想的です。効果的だったチャネルがわかると、次年度からの予算配分の参考になります。上手くいかなかったチャネルは、媒体が悪かったのか、内容が悪かったのかなど、さらに深掘りして検証します。
6-1-2.歩留まり分析
書類通過率・一次面接通過率・内定承諾率など、選考プロセスにおいて次の段階に進んだ人数の割合を分析します。突出して歩留まり率が低かったり、過去に比べて数値が下がっているプロセスに焦点を当てて、何か問題がなかったか考えます。場合によっては、そのプロセス単体の問題ではなく、採用要件の設定や母集団形成など選考以前の部分に問題がある可能性もあります。
6-2.「質」の振り返り
選考の記録を集めたり、実際に内定者に話を聞いたりすることで、採用活動の「質」を分析します。より具体的な情報が集まるので、課題の特定に役立つ可能性は高いです。ただし集計や分析には手間がかかる場合もあります。また、あくまで個人の一例で全体には適用できない場合もあるので注意が必要です。
6-2-1.適性検査の結果分析
選考プロセスで適性検査を実施した場合は、その内容を振り返りの参考にできます。「どういった特性の候補者が選考に通っているか」「自社の採用基準に合っているのか」など全体の傾向が適性検査の結果から見えてきます。現職の社員も適性検査を受けていれば、その結果と比較することもできます。
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6-2-2.面接のメモ
面接時の受け答えや質問内容をメモして残しておくと、振り返りに役立ちます。たとえば「どんな受け答えをした候補者が通過したか」を見返せば、次回に選考基準を検討する際の参考になるはずです。「どんな質問をしたら候補者の価値観や素質を見極められたか」を検証して担当者全体で共有すれば、面接内容の改善につながります。また候補者からの質問で多かった内容を集め、採用サイトや説明会の中で事前に答えるようにしておけば、早期に求職者の理解を深めることもできます。
6-2-3.アンケート・ヒアリング
内定者や中途入社した社員に話を聞くのも非常に効果的です。質問の内容によって、採用活動の良かった点も課題も見えてきます。広く情報を集めたいならアンケート、一つひとつの質問について深掘りしたいならヒアリングの面談を実施すると良いでしょう。
質問項目の例
● 転職活動でどんな情報を参考にしていた?
● 自社の第一印象は?
● 自社の情報発信で特に参考になった内容は?
● 自社の情報発信で不足していた内容は?
● 選考で良かった/悪かった点は?
● 他にどんな企業を候補にしていた?
● 他社と比べて優れていた/劣っていた点は?
● 最終的な入社の決め手は?
● 入社してから感じたギャップは?
7.オンボーディング
オンボーディングとは、新入社員が早期に定着できるようにする取り組みのことです。基本的には配属先の上長や育成担当の領域だと捉えられる場合も多いですが、 採用担当者にも協力できることはあります。
ひとつは、オンボーディングまでを見据えて採用計画を立てることです。配属される部署の体制や教育研修の内容によって、採用時に求める要件や選考基準なども変わってきます。また選考中や内定後に企業理解を深められるようなプロセスを設計することで、入社後のオンボーディングも進めやすくなります。
もうひとつは、選考を通して得た新入社員の情報を受け入れ先の上司に共有することです。「応募書類や面接でどんなことを話していたのか」「どういった働き方やキャリアを希望しているのか」「どのような性格や適性を持っているのか」などの情報は、一人ひとりに合わせたオンボーディングを実施するため非常に役立ちます。
中途採用では、即戦力として入社してくれることを期待しすぎて、オンボーディングが疎かになったり、新入社員がプレッシャーを感じてしまうことが多いです。どんなに優秀で採用要件にマッチしている人材でも、職場に馴染むまでには時間がかかります。
逆に新入社員が理想を描きすぎて、入社後に落胆してしまうケースもあります。企業側も新入社員側も、お互いにハードルを上げすぎてギャップを生まないよう、選考の段階から期待値を調整しておきましょう。
採用はゴールではなく、入社後に活躍してもらい、そして会社を成長させていくための通過点です。ぜひ入社後のことまでイメージして採用活動を進めてほしいと思います。
8.まとめ
ここまで中途採用活動について、網羅的に解説してきました。冒頭にもお伝えした通り、初めから記載している内容すべてを実行する必要はありません。企業によって当てはまる内容もあれば、そうでない内容もあるかと思います。
まずは全体像を把握し、自社にとって重要そうな部分や、課題になっているところから重点的に取り組んでみてください。
中途採用は終わりなく続いていきますから、ぜひ何度もこの記事を読み返して、参考にしていただけますと幸いです 。