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ペーシングとは?人事や採用担当が身につけたいコミュニケーションスキル
「ペーシング」は、人事や採用担当の方にとって有効なコミュニケーションスキルです。会話にペーシングを用いることで、「相手への理解を深める」ことや「円滑なコミュニケーションを図る」ことに役立ちます。
今回は、ペーシングとは?といったところから、ペーシングが人事や採用担当に必要な理由、ペーシングを効果的におこなうポイント、実践するときの注意点などについても解説します。
また、ペーシング以外に、信頼関係の構築に役立つ3つのテクニックも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
INDEX
1. ペーシングとは?
ペーシングは、脳と心の取り扱い説明書とも言われる最新の心理学「NLP(Neuro Linguistic Programming / 神経言語プログラミング)」によって開発されたコミュニケーションスキルです。
「相手のペースに合わせて会話する」ことで、相手との友好的なコミュニケーションを図ります。
ここで言うペースは、「話す速さ、相槌のタイミング、話し方、声の大小・高低、感情の起伏、呼吸」といった言語・非言語コミュニケーションを指します。
相手が会話中に用いた言語・非言語コミュニケーションに合わせて会話することで、お互いの間に一体感が生まれ、相手に安心感や居心地の良さを与えることができます
1.1. ペーシングの目的は「ラポール形成」
ペーシングは相手とのラポールを形成するために行います。
ラポール形成とは、一般的に、相手との信頼関係が構築されている状態のことを指します。
「約束を守る」「対応が誠実」など、具体的な根拠によって信頼できるというよりも、「なぜだか気が合う」「一緒にいると落ち着く」といった精神的な感覚を指します。
ペーシングは、ラポール形成の3原則の一つであり、ペーシングを行うことで相手との間に深層心理的な信頼関係を築くことができます。
1.2. ペーシングで得られる効果
なぜペーシングを行うことで、ラポール形成が可能となるのでしょうか。
ペーシングしながら会話することで、相手は自分に対して親近感を覚えます。
これは、「人は自分との共通点のある人に対し親近感を抱く」という心理学の類似性の法則から成るものです。
そして以下のような効果を得ることができます。
●相手の警戒心を取り除く
●相手に安心感を与える
●相手の自己肯定感や自己重要感を満たす
この結果、相手と自分の間にラポールが形成されます。
1.3. リーディングに繋げられる
ペーシングによってラポールが形成されると、リーディングが可能となります。
リーディングとは、目的に向かってコミュニケーションをリードすることです。
ラポールが形成されている場合、相手は自分を重要な人であると認識しはじめており、自分の話や提案を受け入れやすくなっているため、リーディングすることができます。
以上のように、「ペーシング→ラポール形成→リーディング」というコミュニケーションフレームがあるなかで、最初に踏むステップがペーシングです。
1.4. 医療におけるペーシング
また、「ペーシング」は医療の現場でも使われる言葉ですが、医療におけるペーシングは「ペースメーカーを用いて適切な心拍を補うこと」を意味します。
そのため、今回紹介しているコミュニケーションにおけるペーシングとは意味が異なります。
2. なぜ人事や採用担当にペーシングが必要なのか
人事部は、社員・職員の処遇を決めたり、人材の採用・育成を行ったりなど、その企業に属する人を管理する仕事です。
近年では多種多様が重要視されており、企業おいても、さまざまなバックボーンを持つ人々を雇用しています。多様な人材と信頼関係を築かなければいけない現代の人事部には、ひとりひとりとコミュニケーションを図り相手を理解する能力が求められます。
また、採用担当は、自社で活躍する人を採用するために、設定したペルソナに当てはまる人材を見つけなければいけません。その判断材料として、面接では相手の本音を引きき出す必要があります。
このように、人事部はひとりひとりの社員・職員を理解するために、採用担当は人材を見極めるために、ペーシングで相手に心を開いてもらうことが大切です。
また、採用成功の秘訣として、以下の記事ではペルソナの設定方法について詳しく解説していますので、ぜひご参考ください。
関連記事▼
採用成功の秘訣、人物像・ペルソナ設定とは?作り方やポイントを解説
3. ペーシングを効果的にする2つのポイント
ペーシングを効果的に行うための2つのポイントを紹介します。
3.1. 相手の得意な五感(VAK)に合わせてアプローチする
NLPでは五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)を以下の3つに分け、それぞれの頭文字をとって「VAK」と称しています。
●視覚(Visual)
●聴覚(Auditory)
●身体感覚(Kinesthetic)
人はVAKを用いて情報処理を行います。人それぞれに利き手があるように、情報処理で優位に働くVAKは人によって異なります。
会話中に相手が発する言葉から、相手の得意なVAKを把握しましょう。
視覚優位の人が使いやすい言葉
見える、示す、見通し、狙う、ビジョン、観察する、焦点を合わせる、イメージする、ぼんやり、色、描く、など。
聴覚優位の人が使いやすい言葉
聞く、言う、話す、共鳴、響く、調和する、静か、擬音語(キラキラ、パリパリ など)、感動詞(おぉ〜、えー! など)、誰かの発したセリフ、など。
身体感覚優位の人が使いやすい言葉
感じる、熱い、冷たい、あたたかい、寒い、ぬくもり、つかむ、触れる、身体感覚にまつわる言葉(腑に落ちる、思いをぶつける など)、など。
相手の得意なVAKに合わせた言語を用いて会話することで、自分の発言に対する相手の理解が深まり、コミュニケーションが円滑になります。
3.2. 相手のメタプログラムに合わせてアプローチする
メタプログラムとは、無意識下における情報処理パターンのことで、いわば思考の癖のようなものです。
例えば、人のやる気を引き出す際、人によってかける声が異なります。「これが終われば遊んでいいよ」と課題に取り組む目的を示すことでやる気が出る人もいれば、「今これをやらないと後が大変だよ」と考えられる問題やリスクを示すことでやる気が出る人もいます。
このように、相手の思考の癖に合わせてアプローチすることは、効果的なペーシングとリーディングに役立ちます。
4. ペーシングを実践する際のコツ・注意点
ペーシングを実践する際のコツと注意点を3つご紹介します。
4.1. 自然に行う
ペーシングを行う際は、不自然にならないよう注意しましょう。
相手が真似をされていることに気付いたり、自分の動きが不自然に見えてしまったりした場合、相手は不信感を覚えます。
ペーシングしていることが相手に伝わらないよう、自然に振る舞うことが大切です。
4.2. 共感を大切にする
ラポールを形成するうえで重要なことは、相手を受け入れることです。
基本的に相手を否定せず、相手の感情に共感しましょう。
反対意見を伝えるときは、相手の意見に同調してから反論するようにします。
同調をクッションにすることで、否定された印象が和らぎます。
4.3. コントロールしようとしない
ペーシングは、相手をコントロールするためのテクニックではありません。
相手を尊重する気持ちや、相手と友好的な関係を築きたいという気持ちを大切にして、ペーシングを行うことが大切です。
5. ペーシングと一緒に実践したい3つのテクニック
ペーシングと同様に、ラポール形成を目的とするコミュニケーションスキルを3つ紹介します。
以下の3つのスキルは、相手との信頼関係構築に有効であり、ペーシングと一緒に実践することがおすすめです。
5.1. ミラーリング
ミラーリングとは、「相手の動作やしぐさ、姿勢、表情」などを真似することです。
真似すると言っても、相手と同じタイミングで行うのは不自然であり、相手に不信感を抱かせてしまいます。そのため、相手の動作から少し時間を空けてミラーリングを行いましょう。
ミラーリングは、相手に親近感を与えることに加えて、自分が相手を理解する手段としても役立ちます。
5.2. キャリブレーション
キャリブレーションとは、相手の発する非言語コミュニケーションや相手の状態から、相手の心情を読み解くコミュニケーションスキルです。
「相手の表情や声色、話す速さ、呼吸の速さ・深さ、瞬きの回数、目の動き」などをよく観察し、相手の心理状態を把握します。
キャリブレーションで得た情報は、ペーシングやミラーリングに役立てることができます。
5.3. バックトラッキング
バックトラッキングとは日本語で「オウム返し」を意味し、会話のなかで相手が発した言葉を繰り返すというスキルです。
特に、「相手の感情」や「会話の内容の事実」を意識的にバックトラッキングします。
できるだけ相手の話した表現のまま繰り返すことが大切ですが、必ずしも一語一句を真似しなければいけないわけではありません。
バックトラッキングの目的は、相手の話を理解していると示すこと、相手の話した内容を再確認してもらうことなので、相手の話した内容を要約して伝えることも有効的です。
6. ペーシングを活用して相手との信頼関係を築こう
ペーシングを活用することで、円滑なコミュニケーションを図ったり、信頼関係を築いたりすることができます。
コミュニケーション能力が求められる人事部や採用担当の方は、自然なペーシングを身につけることで仕事に活かすことができるでしょう。
また、相手を理解する方法のひとつに適性検査もあります。SPI3は面接だけでは見えにくい応募者の性格や適性を可視化し、人物理解を深められる適性検査です。応募者を深く理解するのにお使いいただけます。
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