お役立ちコラム
すべてのカテゴリ
人材育成に役立つ「ライフキャリアレインボー」とは?メリットや書き方を解説
社会情勢の変化にともない、「ライフキャリアレインボー」というキャリア理論が注目されています。
ライフキャリアレインボーを企業に導入することで、従業員の考え方やキャリアプランを把握することができ、人材育成に役立てることが可能です。
今回は、ライフキャリアレインボーの概念や、企業に導入するメリット・デメリットなどについて解説します。ライフキャリアレインボーの書き方も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
INDEX
1.ライフキャリアレインボーとは
ライフキャリアレインボーとは、1950年代に、アメリカの教育学者のドナルド・E・スーパーが提唱したキャリア理論です。
従来のキャリアプランニングは、仕事に関わる将来設計がほとんどで、「労働者」としての視点のみでキャリアデザインを描いていました。
それに対しライフキャリアレインボーは、労働者に限定せず、人生において果たすさまざまな役割の将来設計を組み合わせたものです。
1.1.そもそもライフキャリアとは
「キャリア」というと職業における実績や経験を思い浮かべますが、ライフキャリアは「生き方」「人生」「経験」を表します。
アメリカのキャリア理論家であるサニー・S・ハンセンは、 人生には4つの役割があるとして、以下の「4L理論」を提唱しました。
1.労働(Labor)
収入を得る活動
2.愛(Love)
家事、育児、介護、ペットの世話など、大切な存在と過ごす時間
3.学習(Learning)
教育や読書など、自己啓発に費やす時間
4.余暇(Leisure)
趣味、ボランティア、地域活動など、上記に該当しない活動
このように人生には、家庭、職業、趣味、地域活動など、ライフステージごとにさまざまな役割があります。
ライフキャリアとは、人生を形成するすべての役割を包括した表現です。
1.2.ライフイベント表との違い
ライフキャリアレインボーと似ているものに、ライフイベント表が挙げられます。
ライフイベント表とは、予想されるライフイベントを時系列に沿って表にまとめたものです。
人生では、「子ども、労働者、親、余暇人」という複数の役割を同時に進めることもあります。しかしライフイベント表は、帯状の表に描くため、複数の役割を同時に可視化することができません。
キャリアライフレインボーは、以下の画像のように、人生の役割を虹のように積み重ね、該当する期間を塗りつぶして表現しています。
そのため、ライフステージごとの自分の役割を一目で確認することができます。
また、ライフキャリアレインボーでは、自分自身だけの視点でなく、家族や自分に関わりのある人々、社会との関わりを含めた視点から、自分のキャリアを考えることを重視します。
2.ライフキャリアレインボーを構成する要素
ライフキャリアレインボーは、主に以下2つの要素で構成されています。
2.1.ライフステージ
ライフキャリアレインボーにおいて、ライフステージは「時間軸」を指します。
スーパー氏は、人生を以下の5段階に区切っています。
●成長段階(0~14歳)
●探索段階(15~24歳)
●確立段階(25~44歳)
●維持段階(45~64歳)
●解放段階(65歳以上)
2.2.ライフロール(役割)
ライフロールとは、人生において担う役割を指します。
スーパー氏は、ライフロールに以下の8つを挙げています。
●子供
親との関係における自分
●学生
学ぶ立場にいるとき
●余暇人
趣味や遊びを楽しむ時間
●市民
社会を構成する一員として社会に貢献する活動
●労働者
本業・副業・アルバイトを含む仕事をしている期間
●家庭人
親元を離れたときからはじまる役割
●配偶者
夫、妻としての役割(事実婚も含む)
●親
自身の子どもが生まれたときからはじまる役割
多くの方が上記のライフロールを担いますが、なかにはあるライフロールを担わない方もいます。人は、それぞれのライフロールを上手に配分しながら人生を過ごします。
3.ライフキャリアレインボーが注目されている背景
近年では、人生100年時代とも言われるほどの人類の長寿化や、グローバル化にともない、働く人材が多様化しています。働き方や就業に対する意識にも変化が見られ、正規雇用や終身雇用に対する重要性も薄れてきています。
実際に、厚労省が2019年におこなった意識調査では、自身のライフスタイルを優先するために正社員以外の就業形態を選ぶ意見が多く見られました。
参考:正社員以外の労働者の仕事に対する意識/厚生労働省
他にもAI技術の普及やSDGsの推進など、目まぐるしく起こる時代の変化とともに、長い自分の人生におけるライフキャリアを見直す方が増えているようです。
4.ライフキャリアレインボーを導入するメリット
ライフキャリアレインボーを企業に導入することで得られるメリットを、「従業員」と「企業」の観点からそれぞれ解説します。
4.1.従業員が得られるメリット
従業員は、自身のライフキャリアレインボーを描くことで、以下のようなメリットを得ることができます。
●自身の過去・現在・将来を見つめ直せる
●自身の価値観やライフワークバランスを確認できる
●思い描く将来を実現するための道筋を確認できる
ライフキャリアレインボーを描くには、まずは自身の過去から現在までを振り返るため、自分の軌跡や大切にしてきたもの、現状のライフワークバランスを把握・再確認することができます。
また、将来のイメージを具体的にするため、設定したキャリアプランを実現させるために必要なスキルや道筋を確認することができます。
4.2.企業が得られるメリット
ライフキャリアレインボーを用いて従業員のキャリア支援を図ることで、企業は以下のようなメリットを得られます。
●従業員の描くキャリアプランを把握できる
●個々のライフプランに合ったキャリア支援やサポートを考えられる
●従業員のエンゲージメント向上につながる
人材が多様化している現代では、ひとりひとりに合ったキャリア支援をおこなうことが重要です。従業員の思い描くキャリアプランを把握することで、企業は個々に応じた対策やサポート方法を考案することができます。
また、従業員は、設定したキャリアプランの実現に向けて、仕事やプライベートに対するモチベーションを高めることができるため、社内全体の活性化に繋がります。
5.ライフキャリアレインボーを導入するデメリット
ライフキャリアレインボーを企業に導入することで生じるデメリットを、「従業員」と「企業」の観点からそれぞれ解説します。
5.1.従業員側で生じるデメリット
従業員側で生じるデメリットは、自身の現状の役割を再認識することでそれぞれの役割に対する責任感が高まり、上手に時間やエネルギーの配分ができなくなってしまうことです。
例えば、現在の役割が「夫、父、家庭人、労働者、息子、市民」であるときに、すべての役割に対して強く責任を感じ、身動きが取れなくなってしまうことがあります。
役割意識を持つことは大切ですが、自分の置かれている現状や将来設計に合わせて役割の重要度を把握することも大切です。優先順位を決め、上手に配分しましょう。
5.2.企業側で生じるデメリット
企業側で生じるデメリットは、従業員が自身のキャリアプランを描いたことで、人生における仕事や企業の重要性が薄れる可能性があることです。
総合的に見るとお互いにとってよいことであるととらえられますが、仕事をセーブしたり、転職・退職したりする従業員が現れる可能性を考えておきましょう。
6.ライフキャリアレインボーの書き方
ライフキャリアレインボーを書く際は、以下の画像のようなワークシートを作成します。
これは、厚生労働省が提示する「平成29年度 労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業」を参考にワークシートを作成し、記入例を示したものです。
「現在」を表の真ん中に設定し、現在から左側には「過去」、右側には「将来」を5年刻みでそれぞれ10年分記します。
役割は色分けして識別できるようにします。その年齢ごとに、それぞれの役割に費やす時間やエネルギーを「%」に表して該当する色で塗りつぶし、具体的な状態や出来事をメモします。
6.1.現状の把握・過去の整理
まずは現状の把握と過去の整理をおこないます。
現在、5年前、10年前の年齢を記載し、それぞれの役割のパーセンテージや具体的な内容を記入します。
6.2.将来設計
つぎに、5年後、10年後の年齢を記載し、「想定できる」または「自分の理想とする」ライフワークバランスを記入します。このとき、現在と過去に具体的な状態や出来事を記入したように、将来においても想定できる範囲で記入しましょう。
6.3.アクシデントの予想
将来の具体的な状態や出来事を記入する際は、起こりうるアクシデントや意図しない役割も予想して記入します。
自分にとって最悪な状況やその対策を考えておくことで、万が一の出来事に対しても動じず対応することができます。
7.スーパーの提唱する「アーチモデル」
アーチモデルとは、スーパーがライフキャリアレインボーに次いで提唱したキャリア理論です。ライフキャリアレインボーを再定義し、より現実的なものになっています。
出典:【キャリコン】スーパーのライフキャリアレインボー【5つのライフステージ】/キャリコンスタディ
アーチを支える左側の柱は「内的な個人的要因」として自分の興味や得意なことなどを記載し、右側の柱には「外的な社会環境的要因」として社会情勢や社会における自分の立場・関わりについて記載します。
アーチ部分には、2つの柱によって形成された「自己」「役割自己概念」「発達段階」を記載します。
アーチを支える土台部分には、自己の基礎となる生まれ育った環境などを記載します。
8.まとめ
今回は、ライフキャリアレインボーについてまとめました。
ライフキャリアレインボーを企業に導入することで、従業員のライフプランを一緒に整理し、個々にあったキャリア支援をすることができます。
また、従業員は自分の現状や将来について考える機会を得ることで、仕事に対するモチベーションが高まったり、自分に不足しているスキルを把握したりすることができます。
このように、ライフキャリアレインボーを用いることで、従業員の育成に役立てることも可能です。
働き方が多様化する中、従業員ひとり一人が自分に合ったキャリを描くために、強みや価値観の可視化が欠かせません。従業員向け適性検査SPI3 for Employeesは自身のやりがいや強みがわかるので、仕事との向き合い方やキャリアを考えるヒントが得られます。
従業員向け適性検査SPI3 for Employeesの資料請求はこちら>>