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【開発者インタビュー】
「個を生かす」採用を実現するSPI3へ
~報告書リニューアルの背景~
1974年、「性別」や「学歴」が選考基準になるような時代に、個人のラベルではなく本来の持ち味を可視化し、いきいきと活躍できる社会にしたいという想いで誕生したSPI。40年以上の歴史の中で進化を続け、2013年には現在のSPI3が完成しました。
それ以来の大幅改定を2018年1月5日に実施。報告書が全面リニューアルされました。さらに続く2月26日には、新オプション報告書「ストレス分析報告書」がリリース予定です。その背景や進化したポイントについて、株式会社リクルートキャリア HRアセスメントソリューション統括部 統括部長 山﨑 淳(写真右)と、本プロジェクトの責任者である同ソリューション開発部 測定技術研究所 マネジャー 園田 友樹(写真左)に聞きました。
―なぜ、このタイミングで報告書をリニューアルしようと考えたのですか?
山﨑:昨今「働き方改革」や「生産性向上」が叫ばれ、各企業において人材活用が極めて大きな課題となっています。そうした中で「個を生 かす(個人の特性をとらえ、いかに生かすか)」ことの重要性が増し、お客様から「SPI3の結果をもっと活用したい、どう活用したらよいのか?」といったご相談を今まで以上に多くいただくようになりました。
この「個を生かす」という考え方を、私たちは創業以来大切にしてきました。これはSPI3を通じて提供したい価値そのものです。採用活動において、企業は採否判断をするだけでなく、入社者がいきいきと働ける職場や仕事とは何かを考え、実現する責任があります。しかし、時間の限られた採用プロセスの中だけで一人ひとりの向き・不向きを把握しきることは難しい。そこで、私たちが提供しているSPI3が、個人を分析的かつ立体的にとらえ理解を深めるためのツールとして、お役に立てると考えています。
しかし、いざ使おうとすると「報告書が難しくてわかりにくい」という声がありました。そしてその声は、SPI3をもっと活用したいというお客様が増えるとともに多くなりました。この声を逃さず、お客様の利用シーンに目を向け、使いやすい報告書に変えていきたい。お客様が本当に「個を生かす」採用を実現できるSPI3に進化するために、徹底的に思考したい。そう考え、今回のリニューアルを行うことにしました。
―「個を生かす」ことの重要性が高まったことをきっかけに、お客様がにとってわかりやすく活用しやすい報告書を目指して改定を行ったということですね。
そのために、開発プロセスで工夫したことはありますか?
園田:多くのお客様にご協力いただき、報告書についてのご意見をいただいたことです。まずはじめに、お客様が適性検査をどのように利用しているのかを徹底的にヒアリングしました。どのような順番で、何に注目しているか、逆に見ていないものは何か、手分けして事実を洗い出しました。聞いてみると、報告書の読み取り方は企業によって様々でした。また、人事だけが見ていることもあれば現場面接者が見ていることもありましたが、共通しているのは「SPIで応募者への理解を深めたい」と思ってくださっているということでした。改めてお客様にとって、一人ひとりの特徴が正しく伝わる報告書にしなければ、という想いが強まりましたね。
つぎに、報告書の試作版ができた時点で、お客様に直接見ていただきながら意見を頂戴し、修正し、また確認してもらい...というプロセスを何度も繰り返しました。あるお客様の声をそのまま反映しただけでは、別のお客様に見せたときに正しい人物理解につながらず、解釈を誤ってしまうということもあったので、「わかりやすく、だけど正しく」ということを実現するのが非常に難しかったですね。
たとえば「職務への適応のしやすさ」というコンテンツに「集団統率」という項目があったのですが、リニューアル後に「リーダーシップ」と表現を変えています。お客様になじみのある言葉にしたいという理由ですが、変える決断をするために、お客様が「求める人材像」で使う「リーダーシップ」という言葉が本当にSPI3で測定している内容と一致しているかというロジックとの整合性を含め、何度も検討を重ねました。このように細部までこだわって「SPI3の測定内容の正しいアウトプット」と「お客様にとってわかりやすい表現」の接点を見出していきました。
― 一つひとつの文言にまでこだわって作っているのですね。
園田:12,000社ものお客様と受検者に対する責任だととらえています。適性検査を利用するのはベテラン人事だけではなく、新任の人事や現場面接者など多岐にわたります。どのような立場の人が見ても、可能な限り誤解なく読み解けるものをつくることが重要であり、それがSPI3に求められるクオリティだと認識しています。
山﨑:世の中には人をとらえるための様々なフレームがあります。それをそのまま利用して適性検査を開発することもできますが、私たちはあえてそうしていません。「お客様が実践的な場面で正しく人物理解をできるか、そして受検者にとって不利益がないか」ということをきちんと検討した上で商品に反映させていくことが適性検査を提供する事業者の責任だととらえ、こだわっています。
―実際のお客様の反応はいかがですか?
園田:SPI3をご利用中のお客様にはすでにご案内をしていますが、想像以上にいい反応をいただけています。先日開催した新報告書をご紹介するセミナーでも、「人事になって日が浅いですが、これなら使えそうです」「どのような順番で報告書を読めばいいのかがわかりやすくなった」という声をいただきました。様々な立場のお客様に対し、SPI3を使って人を理解するという価値を届けられるのではないかという兆しを感じています。
今後は利用いただいた感想を伺いながら、さらにサービスを磨いていきたいです。
―続いて「ストレス分析報告書」について聞きたいと思います。
最近、若手のメンタルヘルス不全・不適応の問題に注目が集まっていますが、これらの問題をどのようにとらえていますか?
山﨑:若手のメンタルヘルス不全や不適応は、最近始まったことではなく、過去から起きている問題です。しかし、昨今これらの問題に企業として対応できないことが経営的なリスクであるという認識が強まっていることから、適切かつ早期に対応を行おうとする企業が増えてきているのではないかと思います。
また、これらの問題について「最近の若者はストレスに弱い」などと言われることもありますが、私たちは「ストレスに弱い若者が増えている」とは考えていません。企業と個人の環境変化により、誰でもふとしたきっかけでメンタルヘルス不全を起こしうる状況が増えているのではないでしょうか。
―ストレスに弱い人が増えたのではなく、潜在的にメンタルヘルス不全を起こす可能性を持つ職場が増えたということですね。もう少し詳しく教えてください。
山﨑:先ほど述べたように、「企業」側と「個人」側の双方に変化が起きています。企業側の変化としては、若手が担当する仕事の難易度が高まっているにもかかわらず、指導する中堅層が不足し、丁寧に教えて育てることができなくなっていることなどが挙げられます。職場に余裕がなく、若手の強み・弱みを理解するよりも先に「仕事ができるか、できないか」で一辺倒に判断してしまいがちです。
一方、個人の変化としては、育ってきた環境の違いにより若手の就業観・組織観が多様になってきたことがあげられます。たとえば、フリーランスで働いている人が身近にいる世代ですので、会社に対して帰属意識を持ちにくいということもあるかもしれません。マネジメント層と若手の間で、仕事に対する考え方・組織に対する姿勢にズレが生じているのです。
このような環境変化の中で、企業と個人がうまく噛み合わなくなり、メンタルヘルス不全の要因は以前よりも多様化しています。大切なのは、双方の変化を踏まえ、相手を理解したコミュニケーションをとることであり、「打たれ強い人を採用すればうまくいく」というように、問題を個人に帰着させていては、解決は遠のくばかりです。
―なるほど。では、どのような打ち手があると考えますか?
山﨑:繰り返しになりますが「打たれ強いから大丈夫」ではなく、一人ひとりについて、何にストレスを感じるのか、ストレス環境下に置かれたときにどのような反応を示すのか、本当にその入社者を生かすための環境や関わり方はどのようなものかを理解し考えることが重要です。このような話をすると「甘やかし」だと言われることもありますが、決してそうではありません。期待や要望を引き下げたり、苦手なことをさせないということではないのです。
「自分を理解してもらえているという感覚」は、「この組織でやっていける」という心理的な安全・安心につながります。この安心感が、難しい仕事や苦手なことにも取り組んで頑張ろうと思えるベースになります。お互いの理解がないままにコミュニケーションをとると、どうしても表面上の「できる・できない」に目が向き、双方とも疲れてしまいますよね。やはり大切なのは、相手の得手・不得手を理解しようとすることにあります。
―そのような考えのもと「ストレス分析報告書」をリリースした背景を教えてください。
山﨑:私たちの事業活動の根幹は、企業と個人をつなぐために職場・仕事・個人を可視化し、一人ひとりが自身の強みを生かせるよう支援をすることです。時代によって求められるものは刻々と変わるわけですが、昨今においては「ストレス」という観点で個人の特徴をとらえるサービスが強く求められていると認識しています。
このご要望に向き合う中で、我々はリーディングカンパニーとして、「ストレス」という観点での個人のとらえ方に一石を投じたいと思いました。何度も述べているとおり、ストレスは個人と環境の不一致により生じるもので、決して「ストレス耐性」といった個人要因のみで語ることはできません。どんな人でも苦手な環境や仕事はあります。だからこそ、職場との組み合わせや相性、ストレスと個人の関係性を丁寧に見ていくことこそが大切です。ストレス分析報告書では個人の特徴を3指標で測定し、さらに仕事や職場との相性がわかる23項目を表示しています。
たったひとつの「ストレス耐性」などの指標で良い・悪いを判断することが最善の解決策だと考えていない、ということを明確に示したい。「ストレス」という切り口で一人ひとりを理解し生かすための実践的な情報提供をしたい。そう考え、ストレス分析報告書をリリースすることにしました。
園田:学術的な観点でも、ストレスは個人の一側面で見るものではなく、環境との相性を含めた複数の観点からとらえるテーマだとされています。我々もストレスという観点で複合的に人をとらえることができるフレームを提示したいと考えました。
―具体的には「ストレス分析報告書」ではどのようなことがわかるのでしょうか?
園田:前提として、ストレス分析報告書は必ず利用するものではなく、人事用の報告書を見た上で、どうしてもストレスという観点からも確認したい場合に使っていただきたいものです。
その前提で、ストレス分析報告書では、単に打たれ強い・弱いということではなく、ストレス環境下に置かれたときの本人の特徴・何にストレスを感じるか・どのように関わればよいかがわかります。その上で、自社に合うかを判断したり、あるいは適切な配属先や関わり方を検討できるような内容になっています。
ストレス環境下に置かれたときの特徴は、「タフさ(ストレスの感じにくさ)」に加えて「しなやかさ」「積極さ」という3つの指標で結果を提示しています。詳細は割愛しますが、お伝えしたいのは「タフさ」の1指標ではなく3指標で立体的にとらえるべきだということです。タフじゃなくても頑張れている人もいれば、タフでもつらくなってしまう人もいる、ということは誰でもイメージできるのではないでしょうか。私自身もまったくタフではありませんが、ある程度のストレスは受け流すことができるので、折れることなく働けています。ストレスを受けたときにどう感じるか・どう対処するかといった特徴を3つの指標できちんととらえることができます。
また、本人の特徴としては問題がないように見えても、仕事や職場との相性が悪ければうまくいかないこともあります。一方、本人の特徴としてはやや心配な面があっても、相性や周りのかかわりがよければうまくいくこともあります。このような情報を把握するため、「何にストレスを感じるか」「どのように関わればよいか」という情報を提示しています。
―開発において、大事にしたことを教えてください。
園田:2つあります。1つは妥当性を検証すること。ストレス環境下に置かれたときの特徴は「タフさ」「しなやかさ」「積極さ」の3指標でよいのか?これらを本当に測定できているのか?周囲からの評価とSPI3の結果に相関はあるか?を何度も検証しました。「測定できます」と言っても、ご本人の人物像や入社後の様子と関連がなかったらまったく意味がありませんので、実際にお客様にご協力いただきながら、最後の最後までロジックの調整を行いました。
2つ目は、数値だけではなく、相手を目の前にしてコミュニケーションを取れるような情報を提供すること。たとえば、面接で確認すべきポイントと質問例やかかわり方など、数値だけで判断するのではなく相手を理解するアクションがとれる内容にしています。
この2つは、ストレス分析報告書に限らず、SPI3の開発全般に置いて重視していることでもあります。
―ストレス分析報告書は、お客様からの評判はいかがですか?
園田:まずは、このテーマへの関心の高さを感じます。オプションサービスであるにもかかわらず利用したいという声が多く聞こえてきており、先日のセミナーでも参加者の89%が利用したいと回答してくれました。このサービスをきっかけに、お客様と「個をとらえ、理解する」ということについてもっと会話を深められればなと思っています。
山﨑:この報告書を見て、「採用だけでなく配属に利用できそう。出身地のエリアに配属するといったこれまでの方法ではなく、相性をみながら検討したい」とコメントをしてくれたお客様がいました。このようなコメントをいただけたことがとても嬉しく、ぜひそのように使っていただきたいと思います。
―最後に一言お願いします。
山﨑:今回の報告書リニューアルを通じて、お客様の「個を生かす」採用・育成の実現に寄与できますと幸いです。今後も、ご期待に沿えるサービス提供を行ってまいりますので、引き続きよろしくお願い致します。
>>適性検査の活用法や種類について詳しくはこちらもチェック
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