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多様性の時代における志向・仕事観の重要性・後編 ~SPI3 for employees開発背景・活用事例~
2022年1月、弊社では従業員向け適性検査、SPI3 for employeesの提供を開始いたしました。開発背景と活用イメージについて、SPI3 for employeesの開発者・コンサルタントである飯塚彩に聞きました。
「従業員向けの適性検査」であるSPI3 for employees開発の背景として、HRデータの活用、があるかと思います。HRデータ活用について人事の方の関心が高まったタイミングは、いつくらいからになりますか?
2010年くらいから、HRデータを可視化しよう、データベースに蓄積しよう、という動きが本格化してきました。
データ活用の段階を分けると、「可視化・蓄積を行う」、「データを分析・活用する」、「予測に活用する」という3段階に分かれます。
当初は、「まずは可視化・蓄積していこう」という、第1段階目の企業が多かったのですが、最近では複数のデータをかけ合わせて異動検討に活用する、離職の要因分析を行うなど、実際の施策に活用をされている、第2段階目の企業が増えてきました。
今後は「予測」に使う企業も増えてくるのではないかと考えています。人的資本経営の流れもありますが、自社の事業、人・組織における課題を明らかにしながら、そこで何を予測することが有用かを設計し、データを生かしていくことができると、人事領域におけるHRデータ活用の可能性が広がるかと思います。
また、2016年頃からは、データを活用して一人ひとりに合わせたマネジメントを行いたいがどうしたらよいか、というご相談も増えてきました。
「従業員一人ひとりにあったマネジメントを行いたい」という背景には、何があったのでしょうか。
まず発端は、働き方改革かと思います。「会社に出社して、一定時間働く」という一律な働き方ではなく、個々人の状況・価値観を踏まえた持続可能な働き方を推奨されるようになったことは、分かりやすいきっかけでした。
個別性を考慮する必要性から、従業員の状況を把握したい・可視化したい、その情報をマネジメントに活用したい、というニーズが高まっていったのではないでしょうか。
また、メンタル状態の悪化やエンゲージメントの低下を見逃さないために、データを活用しようと考える企業も増えました。
会社というリアルな場所で顔を見ながらコミュニケーションすることができないなかでも、個々人の力を引き出す・生かすうえでは、データをマネジメントに生かしたい、生かさねば、と考える人事の方からのご相談が増えていくなかで、このようなお声に応えるために、SPI3 for employeesを開発いたしました。
「従業員ひとり一人を知る」というテーマについて、その後の企業における浸透・実践状況はいかがでしょうか。
「1on1などの対話の機会は増え、考え方は浸透してきたものの、現場での実践においては課題もある」とおっしゃる人事の方が多い印象を受けています。
特に、1on1の時間は定期設定されているものの業務ベースの会話に終始しがち、「Z世代」の若手世代と上司世代の価値観が異なり、信頼関係を築くことが難しい、それが結果的に若手の離職につながっているといった声を多く耳にします。
例えば、若手社員が安定志向やリスク回避の志向から「早く確実に成長したい」と言うのに対して、上司は「焦らずいろいろな経験をして、失敗もすればいい」と返し、すり合わないといったケースです。
また、良い事例も生まれているものの、上司の興味・関心やスキルによるところが大きいといったお話もうかがいます。
ここまでで、HRデータ活用の文脈で「一人ひとりに合わせたマネジメントを行う」ことが重視されるようになった経緯や、実践することの難しさについてお聞きしました。
こうしたテーマに対して、SPI3 for employeesをどのように活用できるのでしょうか。
最初にお話ししたHRデータ活用については、従業員のSPI3 for employeesのデータを取得し、どんな人がどの部署で活躍しているかを分析して配属の際の参考材料としてお役立ていただく使い方があります。
配置・配属は定性的な情報や経験則に基づいて実施されることが多いかと思いますが、定量的なデータも取り入れることで、判断の根拠を補強することができます。
マネジメント場面での活用はいかがでしょうか。
入社者のオンボーディングの目的で使われるケースが最も多いです。なかでも多いのは、上司や育成担当者が配属前に入社者の結果を見て、関わり方を検討するという使い方です。育成担当者の選定の参考材料とされることもあります。
また、配属後に上司や育成担当者と入社者が一堂に会して、お互いのSPI3 for employees結果を見ながら相互理解を深めたり、今後のコミュニケーションの取り方について一緒に考えたりするという使い方もあり、好評です。
オンボーディングの次に多いのは、キャリア面談でお使いいただくケースです。この場合も、上司がメンバーの結果を事前に見て準備を行う使い方もあれば、メンバーと結果を一緒に見ながら話す使い方もあります。
キャリア面談でありがちなのが、メンバーの希望を表面的に聞き、上司の体験や考えに基づくアドバイスをしてしまうことです。もちろん有益なこともありますが、メンバーに響かない、「押し付けられた」と感じ逆効果になるなどリスクも大きい方法です。
おすすめは、まず報告書を手がかりにして、メンバーの仕事に対する志向・価値観を理解することです。「仕事において何を大切にしているのか、何のためであれば頑張れるのか、それはなぜか」を明らかにしたうえで、「今後はどうしていきたいのか」を引き出すことで納得感が生まれますし、上司のスキルに依存することなく一定のレベルの会話が可能になります。
いずれも、個別性に配慮したマネジメントを実現する上でお役立ていただいています。
あらためて、個別性に配慮したマネジメントを実現するうえでSPI3 for employeesはなぜ有効なのでしょうか。
SPI3 for employeesでは、従来SPIで測定してきた性格に加え、仕事を通して何を得たいか、何を大事に仕事をしていきたいか(志向・価値観)を見ています。これらはいきいきと仕事していくうえで最も重要な要素ですが、業務遂行に必要な会話には表れにくく、そのため本人もうまく言語化できないということも少なくありません。こうした要素を可視化できることが、有効性の理由の1つです。
また、メンバーと一緒に結果を見ることができるという点も有効です。1on1でメンバーと何を話すか困っている上司の例をお話ししましたが、シンプルに「この間受けてもらった結果が返ってきたから、一緒に見ながら話そう」と言うだけで普段とは違う会話ができたというお声もよくいただきます。
回答者本人に対する活用事例はいかがでしょうか。
SPI3 for employeesは、回答者本人の自己理解にも有用です。
2年目になる直前、リーダーになった直後など、その人にとって次のステージに上がる節目のときに、強みの棚卸しや、今後に向けた個性の生かし方を考える手がかりとして活用されることが多いです。
ある会社では、中堅社員研修でSPI3 for employeesを導入いただきました。成果に対する期待が高くなると共に、人生や働き方について考える節目で、自身の持ち味ややりがいを再認識し、今後に向けた行動計画を立案することを目的としたご利用でした。
この研修に参加されたある参加者の例をご紹介します。その方は、仕事にやりがいを感じられないことに内心悩まれていましたが、報告書を使って他の参加者と話すなかで、自分は周囲との良い関係が力になること、現在はその志向が満たされず孤独を感じており、やる気の低下につながっていることに気づかれました。研修後は周囲との関係性を大事に思っていることを周囲と共有したり、自ら働きかけを増やしたりしていくことで、安定感を持って働けるようになったということです。
別の会社では、自分らしいリーダーシップのあり方を見つけていただくことを目的として、リーダークラスの方々にSPI3 for employeesをご回答いただきました。研修のなかで結果をもとにご自身の影響力の源泉を掘り下げていただくとともに、研修後には上司とも会話をし、すり合わせていただきました。
このように、SPI3 for employeesは様々な用途・さまざまな場面で活用いただくことができます。そのため、自社でどのように使うかを事前に設定いただいてから実施いただくことをお薦めしております。
目的・用途・活用場面に迷われる場合には、ぜひサイト内に掲載しております、お客様事例をご参考にしていただけますと幸いです。