株式会社クロス・マーケティンググループ
- 従業員数:
- 連結従業員数1,530名(うち、臨時従業員数261名) ※2023年6月末時点
- 業種:
- 情報・通信業
- 課題:
- 人材要件設計
- 初期選考
- 面接
- 内定者フォロー
- 配属
"カルチャーを体現する人材の採用・活躍に向けて"
~データ分析と対話で人事を進化させる取り組み~
クロス・マーケティングのカルチャーにフィットする人材の採用を実現したいと考えた。「カルチャー・社風」の捉え方が個々人によっており、採用時の目線を合わせる必要性を感じていた。
SPI分析をもとに「求める人物像」を再構築し、経営層・現場面接者・人事が同じ目線を持てるように丁寧にすり合わせを実施した
採用時点で期待と社風を伝えることで、 動機づけや入社後のギャップを防ぐことにもつなげる
採用方針やSPIの読み取り方の目線がそろい、さらにチームビルディングの副次的効果も得られた
採用だけでなく、新卒入社者の配属時にSPI3のデータを参考にすることで、より良い初期配属を進められている
私のキャリアのスタートは、人材業界でした。営業やキャリアアドバイザー(CA)、新規事業やマネジメントを経験したのちに、SaaS業界に転職しました。これらの経験から「裁量権を持って働きたい」「常に新しいことに挑戦したい」という思いが強くなり、クロス・マーケティンググループに辿り着きました。
当社は「Just go for it!(やればいいじゃん!)」というキーワードで社風を表現しています。そこには「みんなのために、クライアントのために良いと思ったことはどんどんやってみよう。できない、ではなく、どうやるか。失敗なんか恐れないのがチャレンジャーの特権」という意図が込められており、挑戦を後押しする風土があります。私自身、その風土に惹かれて入社を決めており、当社の特長だと感じています。
マーケティング支援事業は、「顧客の事業成長に向けて、正解がないなかで顧客と共に課題を解決し、施策を企画・実装する。マーケティング活動一連の支援を行う」ビジネスです。社員の当事者意識や、自ら考えて行動することが価値提供において重要となるため、若手であっても挑戦心をもって取り組むことを大切にしています。
かつてのネットリサーチ事業は、「顧客が欲しているデータをスピーディーに提供すること」が価値でした。しかし市場の変化に伴い、「その後の行動をどうしたらよいか、どう解決したらよいか」まで支援してほしい、というニーズが高まっていきました。
その流れを受け、当社は2013年に持ち株会社制に移行し、マーケティング課題に対して、課題解決・実行支援まで行う形で事業範囲を拡大してきました。
ちょうどその頃、私は当社のグループ会社に入社し、マーケティングリサーチの営業として当社でのキャリアをスタートしました。数年営業を経験した後、マネジャー・部長として営業組織のマネジメントを担当するなかで、組織についてある課題感を感じるようになりました。
具体的には、社内のさまざまな可能性に目を向けず、キャリアに悩んで辞めていくケースについてです。さまざまな企業とのM&Aを行ってきた結果として、クロス・マーケティンググループ内には、キャリアの選択肢が豊富にあります。しかし、今の職場・手元の仕事にしか目を向けずに、キャリアに悩むとグループ会社以外の他社を選ぶ、という場面をみると、もったいない、と感じるようになりました。
そのタイミングで人事部門への異動の打診があり「人事は未経験ではあるものの、自分の問題意識を解決するためにチャレンジしよう」という気持ちから、思い切ってジョブチェンジすることにいたしました。
採用活動を任されて最初に着手したことが、求める人物像=「クロス・マーケティンググループが目指す方向性・社風を体現できる人材」を具体化すること、です。
もともと私自身が感じていた課題意識は、もったいない退職のケースでしたが、「辞めない人材を採用する」のではなく、当社のカルチャーに合った挑戦的な人材を採用し、その人たちが辞めずに・前向きに活躍できる環境をつくりたい、と考えました。
前提として、「個人のキャリアはその人自身が決めること」であり、会社が決めるものではありません。社外を含め、ベストな選択肢があるのであれば、ぜひそれを選択したらよいと思います。ただ、グループ会社内でやりたいことがやれるのに、そのことを知らない・気がつかずに辞めてしまうのは、会社としても社員にとっても機会損失です。
そのため当社のカルチャーに合う人材を採用すること、本人のキャリアを開花させるようなコミュニケーションを取ること、その両面を進めるべきだと考えました。
そこで、採用活用時のSPI3のデータを活用して、社員の傾向分析を行いました。
職務・組織に適応し、成果を上げている社員の共通特性などは、かなり納得感がありました。例えば「自律的であること」はひとつの共通特性だったのですが、まさに当社のカルチャーとフィットした結果であると感じました。
顧客の成果にコミットし、課題解決・施策実行まで支援していくうえで、顧客の期待に100%応えるだけでは十分ではありません。自らインプットを行い、自分なりの考えをもったうえで、社内の専門家の力も引き出しながら、100%の期待を超えた提案を行っていくことが求められます。その前提には「自律」があると考えていますので、違和感のない分析結果だと感じました。「成果を見据えて人を動かすような人」という、求める人物像が浮き彫りになりました。
SPIの分析結果を採用やコミュニケーションの強化に活用しようと考えた際に、社内メンバーの目線合わせ・対話によるすり合わせには力を入れました。
「カルチャー・社風」の捉え方はファジーなものです。個々人の捉え方に任せるとどうしてもずれてしまうと考えました。そのためワークショップ形式で、SPI3の分析結果を共有しながら、「どういう人材が当社に合うのか、それはなぜか」「どういうコミュニケーションを進めていくべきか」について、まずは人事チーム内ですり合わせを行いました。
ワークショップを行うことで、あらためて採用方針やSPIの読み取り方の目線がそろったこと以外に、チームビルディングの副次的効果もあったと感じています。
採用メンバーのバックグラウンドはさまざまであり、ワークショップの場でお互いの考えや意見を出し合う対話を通じて、それぞれが大切にしていることが共有できました。
その後現場面接者とコミュニケーションを取るうえで、人事チームがSPI3を活用できる実感をもっていること、各メンバーが同じ目線で会話できることは非常に重要だった、と今振り返って感じています。
SPI分析をもとに再構築した「求める人物像」は、主に面接でのコミュニケーションに活用しています。
当社のカルチャーに合うかどうか、を応募者と面接内ですり合わせていくうえでは、経営層、現場面接者、人事が同じ目線であることが重要となるため、共有・意見交換を丁寧に行っていきました。一度インプットして終わりではなく、面接を進めるたびに、基準やコミュニケーションの取り方、活用するツールなどを都度見直すやり取りを何度も重ねることで、改善が進んでいきました。
求める人物像は、見極めでの活用にとどまらず、採用者への社風の共有・動機付けでも活用しています。例えば、「当社は挑戦を応援する風土があり、こんな人が活躍しています。あなたの特徴や強みは〇〇だと感じました。もし入社いただいたら、当社でこんなことに挑戦いただけると思います」と伝えることで、採用時点で期待と社風を伝えることができます。
採用時にすり合わせを行っておくことは、入社後のギャップを防ぐことにもつながります。
求める人物像を軸にした採用活動について、現場の面接者など社員の反応は良好です。
もともと「当社のカルチャーにフィットする人材」という求める人物像には、社内で異論はありませんでした。SPI3の分析結果に対する納得感も高く、「感覚的に感じていたことがデータで裏付けられた、現場の実感値と近い」という感想が多い状況です。
ただし、採用を進化させる取り組みは、まだスタートしたばかりです。
ベストな採用の状態を実現するには、2~3年かけて磨いていく必要があると思います。当社に合う人材に出会い、よりよいコミュニケーションを実現できるような採用活動を目指し、効果検証・改善を積み重ねていきたいと思います。
また当初の課題意識である「当社でのキャリアの道を描いてもらう」ことに立ち返り、採用だけではなく入社後の評価やキャリア開発にもつなげていきたいと考えています。
現在は新卒入社者の配属時にSPI3のデータを参考にしていますが、今後はタレントマネジメントシステムにデータを蓄積しながら、異動・配置の改善や進化を進めていきたいと思っています。
また、社内向けのストーリーテリングや情報共有も強化したい、と感じています。「リサーチャーをやったあとにプロモーションの仕事をすると、こんなチャレンジができる」など、社内におけるキャリアの選択肢を豊かに示していきたいですね。