お役立ちコラム

離職率は下げられる!
どんな企業でも取り組める離職防止2つの対策

2023年03月17日
  • SPI3の活用

「"若者の離職は3年3割"という言葉をよく聞くが、何を対策したらいいか分からない」
「苦労して採用した新入社員が辞めてしまい、職場が落胆ムードに包まれている......」
「即戦力の期待で採用した若手の中途採用者が、3カ月も経たずに離職してしまった......」

業界を問わず人手不足が続く昨今、新入社員はどの企業にとっても大切な存在といえるでしょう。
ただし、若い世代の社員が減りつつある企業では、何をフォローしたらいいか分からないと途方に暮れているケースもあるのではないでしょうか。
なかには「若手は給与や配属への不満ですぐ辞めるので、対策のしようがない」と思い込み、匙を投げがちな方も少なくありません。

重要なのは、世代にとらわれるのではなく、目の前の新入社員本人に目を向けることです。
どんな企業でも取り組める対策を行うことで、将来自社で活躍する人材を失わずに済む可能性があるのです。

今回は、離職率が高い企業の特徴と対策を、陥りやすい誤解も含めて解説します。

現在離職問題でお悩みの方も、今後入社する新入社員のためにフォロー施策を検討中の方も参考にしていただければ幸いです。

離職率とは?

離職率は、企業において一定の期間内で退職した従業員の割合を示すものです。一般的に、離職率が高い企業は人材が定着しにくい企業であると判断されます。 

離職率は、厚生労働省の資料によると、以下の算出式で求めることができます。

  • 離職率=一定期間内の離職者数÷1月1日現在の在籍者数×100%

しかし、一概に「離職率が高いから、良くない企業だ」とは言いきれません。離職率は不可抗力によるものも少なくないからです。
例えば、スタートアップ企業では、元々独立志向やキャリアアップ志向が高い人材が多いため、一定の役割を果たしたタイミングで円満に退職するケースが少なくありません。また、新規事業の立ち上げのために大量採用をすれば、それだけ離職の確率も高まります。ただし、上記のような例外のケースを除けば、離職率の高さはネガティブな影響が増えるケースがほとんどです。
思い当たる理由もなく離職率が高い場合は、離職防止の対策をすべきでしょう。

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入社後3年以内の離職率は30%以上

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厚生労働省が公表した離職状況によれば、大卒者の就職後3年以内の離職率は 31.2%でした。
高校卒の3年以内の離職率は36.9%となっており、大卒・高卒共にここ数年は30%以上の離職率となっています。

それではなぜ、離職してしまうのでしょうか?

厚生労働省が2020年に行った「雇用動向調査結果」によると、転職をして別の企業に入社した人の前職を辞めた理由として、次のようなものが上位を占めています。
 

【前職を辞めた理由】

  • 給料などの収入が少なかった
  • 職場の人間関係が好ましくなかった
  • 会社の将来が不安だった
  • 労働時間、休日等の労働条件が悪かった
  • 能力、個性、資格を生かせなかった

    ※男女共に1位、2位を占めた「その他の理由(出向等を含む)」「定年・契約期間の満了」を除く

収入をはじめ、すぐには改善が難しい項目も理由として挙げられています。
しかし職場の人間関係や会社の将来への不安、また、本人の効力感は対策の余地があるといえるでしょう。

参考:令和2年新規学卒就職者の離職状況

参考:令和2年雇用動向調査結果の概要

離職率が高いことで考えられるリスク

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離職率が高いことによって、企業にどのようなリスクが起こり得るのでしょうか。
代表的な3つのリスクを紹介します。

●コストが発生してしまう

離職率が高いと、企業は絶えず人材を採用する必要があり、それだけ採用コストが膨らみます。

就職みらい研究所が公表している「就職白書2020」によると、求人サイトへの掲載費用をはじめ、説明会や面接会場の手配・交通費など、1人あたりの平均採用コストは新卒が93.6万円、中途が103.3万円となっており、決して安い金額ではないことが分かります。
また発生するコストは、採用場面に限りません。

教育研修の実施コストや、育成に関わった社員の稼働コストも無駄にすることになります。

不安定なビジネス環境が続く昨今においては、企業の体力温存のためにも、本来発生しないことが好ましいコストを排除する努力は求められるでしょう。

参考:就職白書2020

●社員の負荷につながる

退職者が担当していた業務は、他の社員の誰かがしばらくは代替する必要があります。
昨今は人員面で余力がある企業は多くないため、他社員への負荷の影響は大きいでしょう。

さらに、せっかく育成を施した新入社員が辞めてしまうことは、他社員のモチベーションにも悪い影響を与えます。
職場が暗い雰囲気になってしまうのは、コストで算出できないダメージといえるでしょう。

●風評被害につながる可能性がある

離職率の高さは、長時間労働やサービス残業など悪いイメージに直結しがちです。
「人の入れ替わりが激しい、きつい企業」といった評価が一度ついてしまうと、払拭するのは困難でしょう。

また、新卒採用のターゲットとなるZ世代(1990年代後半から2012年頃に生まれた世代)は、採用活動にSNSを積極的に活用しています。

SNSで企業の悪い評判が拡散されてしまうと、企業ブランディングも毀損してしまいます。
悪い企業イメージが定着してしまうと、採用場面のみならず、取引先からも不信を招くリスクに発展しかねません。

離職率が高い企業の特徴とは

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上記で紹介した転職理由を踏まえ、離職率が高いといわれる企業にはどのような特徴があるのかをさらに深掘りしていきます。

●労働環境が若手世代にフィットしない

今の若手社員は、働き方において自由さや透明性を重視する傾向にあります。
「働き方改革」「ワークライフバランス」などの言葉が一般的になった今では、かつてのように会社に忠誠心を誓うような働き方は、新入社員にはフィットしないでしょう。
また、ジョブ型人事制度に代表されるように、旧来型の終身雇用や年功序列は、働く側にとって決して好ましい制度とはいえなくなっています。

弊社が多くの企業と関わってきたなかでつかんだ、離職につながりやすい労働環境の特徴として以下が挙げられます。

【離職につながりやすい労働条件の例】

  • リモートワークができず、必ずオフィスに出社しなくてはならない
  • 休暇が取りにくく、残業が多い
  • どれだけ成果を上げても、年次が上の社員の賃金を超えられない

【離職につながりやすい組織風土(労働風土)の例】

  • 長時間働いた人が奨励される風土がある
  • 評価が不透明で、上司に求めても評価結果の根拠を教えてもらえない
  • 人事や上長に労働条件の改善を求めても、一蹴されてしまう


上記例のとおり、「労働環境」は、変えにくいもの・変えられるものに分けられます。

労働条件は人事制度も絡むため、すぐに改善することは難しいものが多いでしょう。一方、組織・労働風土は受け入れ側の上司や周囲の人の心構えで、ある程度は改善可能です。

労働条件は入社前に合意しているため、離職につながるリスクが高いのは、むしろ組織・労働風土の可能性もあるでしょう。

●周囲とのコミュニケーションが良好でない

多くの人にとって、会社で過ごす時間は長いものです。周囲とのコミュニケーションがギスギスしていることは、大きなストレスにつながりやすくなります。

特に新入社員の場合、入社後しばらくは分からないことばかりです。
人間関係が複雑で、閉鎖的な風土の場合、誰に質問をすべきなのか、誰の指示に従うべきなのかが分からず、気を使って疲弊してしまいます。

困ったことに、新入社員から声がけをしないと、周囲は「積極性が足りない」や「おとなしすぎる」など、本人を誤認してしまうケースもあります。

結果として、新人は誰にも悩みを話すことができないまま、離職によって問題解決をはかろうとするのです。

●仕事への不適応を感じている

思っていた仕事と異なったり、自分の力が発揮できていないと感じたりすると、離職傾向は高まりやすいでしょう。

特に就労経験がない新入社員の場合、仕事のイメージが表層的になりがちです。加えて、自分が思っている適性と、本来的な適性を見誤っているケースもあります。

採用の面接時に仕事への説明が薄かったり、本人の適性を見抜けなかったりする場合、入社直後の段階での離職を招きやすいでしょう。

入社直後の壁を乗り越えても、まだ油断はできません。
仕事とのフィット感に疑問を抱いたとしても、入社後すぐに一人前に仕事ができるわけではないことは、本人もある程度は理解しているはずです。

特に離職につながりやすいのは、将来に希望が持てない場合です。
「周囲のフォローがなく、このまま続けていてもスキルアップできる気がしない」や「3年目の先輩の働き方は、自分の理想と違う」と感じると、時間を無駄にしたくないと感じ、離職を検討するようになるのです。

離職率を下げる2つの取り組みとは

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新入社員が離職する原因をすべて取り除ければよいでしょうが、現実には難しいこともあるでしょう。また、新入社員は満足したとしても、他の社員の不満につながるリスクもあります。

ここでは、どのような企業でも実践でき、なおかつ新入社員の特性にしぼった取り組みを2点紹介します。

●労働環境を整え、モチベーションを維持する

前述のとおり、新入社員が求めるようなリモートワークや成果主義の賃金制度がすぐに導入できればいいですが、多くの場合は時間を要するでしょう。

したがって、まずは本人のモチベーションを下げないような環境整備が求められます。
例えば、良い動きや結果が出た場合に、成長を称えたり、次のハードルを設けたりするような関わりです。
すぐに賃金アップや昇格などの具体的な報酬につながらなかったとしても、本人のやる気に火を灯すことはできるはずです。

アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」によると、関わり方を変える方が本人のやる気に影響を与える可能性が高まります。

報酬や作業条件のような労働条件は「衛生要因」と位置づけられ、不足すると不満を引き起こしますが、満たしたからといって満足感につながるわけではないのです。
一時期は不満が抑えられたとしても、他に良い条件の会社に転職する可能性は残ります。

むしろ定着を考慮するならば、「達成すること」「承認されること」のような「動機づけ要因」に着目すべきではないでしょうか。

●マネジャーだけでなく、組織ぐるみでフォローする

まだ仕事を一人前に遂行できない新入社員にとっては、職場の居心地の影響は想像以上に大きいものです。
上司からのフォローはもちろん重要です。しかし、マネジャーは自組織すべてのメンバーに目を配る必要があり、新入社員に十分に関与する余力がない場合もあります。

上司に新入社員のフォローを任せきりにせず、組織メンバー全員が新入社員を受け入れる姿勢でいれば、新入社員は「自分はこの職場に受け入れられている」「はやく成長しよう」と前向きな気持ちが芽生えるでしょう。

なお弊社機関誌で取り上げた「組織コミットメント実態調査報告」では、"組織から気持ちが離れる瞬間"について、以下の項目が上位に挙がっています。

  • 「上司との人間関係」
  • 「会社の方向性」
  • 「評価の正当性」
  • 「仕事のやりがい」

上司との人間関係以外は、職場メンバーでもある程度フォローできるのではないでしょうか。
具体的には、先輩が会社の未来について自分なりの言葉で語ったり、過去に仕事を通じて評価されたポイントを伝えたり、などの関与です。
むしろ上司では難しい、リアリティが高い情報提供ができる可能性もあります。

新入社員に気を配ってむやみにコミュニケーションを取るのではなく、上記調査結果も参照していただき、本人が欲している情報提供を心がけましょう。

参考:RMSMessage38号「組織コミットメント実態調査報告~組織目的への共感に着目して」

離職防止のためには、本人理解が最重要

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前項の2つの取り組みを展開していくには、大前提として本人の性格や重要視しているものを理解する必要があります。
もし採用場面で本人の特徴を可視化しているSPIを導入している場合は、入社後の定着にも活用してはいかがでしょうか。

具体的に、SPIを定着施策で活用している企業から聞かれる、離職防止の効果を紹介します。

●初期配属のミスマッチが防止できる

就労経験がない新入社員は、自分の隠された仕事の適性を理解していないケースがほとんどです。
SPIがあれば、本人がフィットしやすい職場環境や、力を発揮しやすい仕事のスタイルが把握できます。
入社直後の離職は、配属のミスマッチが要因として考えられます。
フットワークを生かして、てきぱき仕事を進めることが強みの新入社員を、じっくりと取り組むデスクワークの部門に配属してしまっては、持てるポテンシャルは発揮されないでしょう。

適性レベルでのミスマッチが生じてしまっては、本人も「努力ではどうにもならなそうだ」と、早い段階で諦めてしまい、次の道を模索するようになります。

●本人に合わせたコミュニケーションが取れる

SPIのデータを配属先の上司や先輩が見ることで、本人の性格特徴に加え、好むコミュニケーションまで把握できます。

新入社員本人のことを知らなければ、周囲は自分が得意なコミュニケーションを押し通すことになってしまいます。悪気がなかったとしても、新入社員には苦痛になることもあるでしょう。

SPI3の報告書には「コミュニケーション上の注意点」が記載されます。

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良好なコミュニケーションの1歩目は、相手を知ることにあります。
採用に携わっていない職場メンバーとしても、全く性格の分からない新入社員を受け入れることは、プレッシャーにもなるでしょう。
SPIのデータがあることで、新入社員本人と職場メンバー・上司をつなぐ架け橋になるはずです。

新入社員の可能性を摘まないために

入社した人のうち、30%が3年以内に辞めてしまうというのは、多くの企業にとって頭を悩ます課題といえるでしょう。
青山学院大学経営学部教授の山本寛氏によるコラム「リテンション施策は対象者を絞ってセットで実行すべし』によると、「2つ以上の理由」が重なったときに離職を決意するケースが多いそうです。

2つの理由に何が該当するかは、新入社員一人ひとりで異なります。
つまり、手当たり次第に対応施策を打つよりも、入社した社員が「何を重要視しているか」を把握することが、何より先決といえます。

SPIデータを有効活用しながら、目の前の新入社員が大事にしていることを理解するよう努めましょう。

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