株式会社トラストバンク
- 従業員数:
- 235名(アルバイト含む/2023年3月31日現在)
- 業種:
- 通信・情報処理・ソフトウェアサービス
- 課題:
- マネジメント
- 人材要件設計
「人事」は終わりなき物語
~点を線へとつなぐ採用・オンボーディング支援~
採用・オンボーディングの属人性・バラつきを解消し、組織の急拡大に耐えられるような人事制度・組織基盤を創りたい。
SPI3 for Employeesを実施し、データの分析と社員へのヒアリングをもとに「求める人財像」を策定。
面接でのすり合わせ精度が上がり、面接通過率が向上。共通言語化でき、マネジメント上のコミュニケーションも円滑になっている。
私たち2人はキャリア採用ですが、前職のときから人・組織領域に携わっており、「人の縁」や「人の可能性」の重要性を感じてきました。
さまざまな業務がAIやシステムに置き換わるなかで、「人」はロジックだけでは語れません。そこに人事としての面白さや可能性を感じていました。
トラストバンクはふるさと納税事業(ふるさとチョイス)をはじめとした地域の活性化を担っています。都心部とその他地域の情報などの格差が激しい現状において、人事として「社員の成長を支援すれば、会社の成長につながる」「会社が成長することは、地域の活性化にもつながる」という想いから、当社の人事に携わりたい、と入社を決めました。
会社が急成長していくフェーズでさまざまなテーマを任されることは、チャレンジングなことだと感じています。また、チャレンジしたいと声をあげれば任せてもらえるという会社の社風があり「挑戦できる貴重な機会なので、期待に応えたい」という想いで取り組んでいます。
人の可能性に限界がないように、人事も終わりのない「物語」のようなものと捉えています。何の施策をするにしても「基盤をつくる→運用をしてブラッシュアップする→質をさらに向上させる」の3ステップを大事にしています。人事としてのチャレンジは道半ばですが、継続して物語をコツコツと紡いでいる感覚です。
もともと当社は、採用選考の辞退率や社員の定着率に、大きな課題を抱えているわけではありませんでした。
トラストバンクには、「地域のために何かできる」という共通認識が社員の根底にあり、それがあってか、優しい人が多いのが特徴です。最近も、退職後に地元に戻る社員に対して、「またぜひ一緒に仕事をしましょう」という気持ちを込めて、一緒に仕事をした社員が集って送別のセレモニーを開催しました。
ポジティブなキャリアチェンジがあることは理解していますし、自社で培ったことを他の仕事で生かしてくれること自体も前向きに捉えていますが、縁あって入社した社員にはできるだけ長く働いて活躍してほしいと思っています。
会社全体の成長を考えた際に、どのような人財※が必要になるのだろうという「求める人財像」を策定する人財開発プロジェクトを社内で立ち上げました。
※トラストバンクでは、従業員を大切な財産であると考え「人財」と表現しています
人財開発プロジェクト取り組み前も、それぞれ面接者なりが「求める人財像」のイメージはあり、想いを持ちながら採用面接を行っていました。一方で当時、会社のバリューも策定されたばかりで浸透できておらず、トラストバンク全体として採用すべき人のイメージは言語化できていませんでした。そしてオンボーディングについても、各事業部でできることに取り組んでいたものの、全社で体系立った施策にはなっていませんでした。
当時は会社の転換期で、ベンチャー企業の良さを大事にしつつも、組織の急拡大に耐えられる柔軟な人事制度に改定している最中で、その一環として、採用やオンボーディング施策でも見直すべき点はないかを点検していき、「求める人財像」を核にして、採用の基準からオンボーディング施策までが繋がるように設計することができれば、組織的な基盤になるのではないかと考えたのです。
自由度の高さという良さは生かしつつ、会社として体系立った仕組みをつくろうと決意しました。
最初に、求める人財像や中長期的な人事マネジメントポリシーを考え、そこから採用・評価・育成を紐付けていくことに取り組みました。さらに、各々の点の施策を線としてつなげていくためには、客観性を上げる必要があると考え、SPIデータを検討しました。
具体的には、会社のミッション・ビジョン・バリューをあらためて整理しながら人事マネジメントポリシーを定め、自社らしい人財の特徴を確認していきました。
そのプロセスで、社員のSPIデータの分析やトラストバンクで活躍する人財へのヒアリングなどを行い、2022年に「求める人財像」ができ上がりました。その後「求める人財像」を採用の基準として展開。2023年現在は、ブラッシュアップしている段階です。
全社員にSPIを実施したデータの分析結果から、トラストバンクらしい人財として、例えば「自分なりの信念をもって試行錯誤しながら粘り強くチャレンジする」などの傾向・パターンを把握することができました。これらの傾向は当社のバリューとつながる内容であり、納得感の高いものでした。
SPI3 for employeesは、受検人数が多くデータの信ぴょう性が高いことや、リクルートマネジメントソリューションズの社内に独自の研究機関を持っていることから、信頼感がありました。実際の従業員の結果を見ていても、違和感がありませんでした。
求める人財像を念頭に置きながら、職務経歴書・SPIの報告書を確認し、応募者一人ひとりの個性を踏まえたすり合わせポイントや面接で質問したいことを事前に準備することで、多くの面接を効果的に進められています。
このような面接の仕組みがあること、SPIの項目やタイプを共通言語とすることで、役員間のすり合わせがスムーズになる効果もありました。
また、SPIデータを分析する機能も、人事施策の企画や振り返りでいつも活用しています。自社の人事施策の企画・実行には、SPIデータ分析・活用は必須になりつつあります。
SPI3 for employeesは、オンボーディングの際のフォローポイントを確認するツールとしても活用しています。
入社後の立ち上がり方や必要な支援は、入社者一人ひとりによって異なるため、個々人に合わせた支援を行いたいと考えています。SPIがあることで、その人がどのような支援をおこなえば成長していけそうかという仮説を立ててフォローできる利点があります。
採用面接での会話から、入社後のオンボーディングは始まっていると考えています。採用面接では、面接者の定性的な感覚も踏まえ、活躍につながりそうな特徴、入社後につまずきやすそうな特徴について仮説を立て、応募者本人とすり合わせるために活用しています。
また、これまでは人事でデータ分析を行い活用してきましたが、これからは現場のマネジメントにも展開していくフェーズであると捉えています。
具体的には、面接担当と上司・OJT担当が異なる際に、SPIデータを架け橋として、入社する人の個性・特徴を共有し、上司・OJT担当が受け入れ準備をしやすくするなどの用途で活用したいと思っています。
一連の取り組みを通じて、当社に合う方に出会い・入社いただけており、「採用力」が明らかに向上した手応えを感じています。
2021年と2022年の採用プロセスの定量数値を見ても、各所で成果が出ています。
例えば「求める人財像」があることで、人材紹介会社から自社に合った人財を紹介してもらえることが増えました。
また、1次面接の見極めの精度が上がったことで、最終面接の合格率も上がっています。
もともと面接では、応募者が地域に具体的にどう貢献したいか、ビジョンを深掘りするようなやり取りを行ってきました。SPIがあることで、基本的な性格・特性が把握できるため、その人が描く世界観や価値観に踏み込んだ深いコミュニケーションが成立しているからでしょう。
社内でも客観的なSPIデータがあることでの副次的効果を感じています。例えばマネジメントクラスでも、共通言語ができたことでコミュニケーションが円滑になる効果があります。
人事の仕事は、採用だけではなく、採用した人が入社して活躍するまでと捉えています。その観点で、オンボーディング施策はもっと進化させていきたいですね。
現在オンボーディング施策において、地域経済や地域の生産者支援に関するノウハウなど、当社で仕事を行っていくうえで必要な知識を集約し、入社者に伝える仕組みを検討しています。
一方で、会社の成長スピードが速いため、採用時と入社時の状況が変化することもあります。そのため、入社後のギャップを小さくするためにも「オンボーディング」は継続して取り組んでいきます。
今後は一人ひとりの状況を踏まえつつ、研修カリキュラムも磨き上げて、全社の支援を強化していきたいと考えています。
「入社して良かった」その一言を聞くために、人事でできることはもっとあるでしょう。
社員が生き生きと働き、成長していく状態を実現することで、その先の地域の活性化に貢献していく。人事としても矜持を持ちながら伴走を続けたいと思っています。
※撮影場所:Wework渋谷スクランブルスクエア