導入事例

WILLを引き出すオンボーディングで
新入社員の立ち上がりを支援

野村不動産ソリューションズ株式会社
目的・課題

コロナ影響もあり新入社員の離職率が高まる中、新人のWILLに寄り添ったフォロー、育成の施策を考える必要があった

SPI3の
活用方法

新入社員にはSPI結果を踏まえたWILLの言語化、CANやMUSTとの接続を行った。先輩社員に対しても受検後に読み取り方の説明会を実施した

効果

新入社員の離職率が3分の1に減少。蓄積したデータをもとに、新入社員以外にも施策を展開したい

コロナの影響もあり新入社員の離職率が上昇

野村不動産ソリューションズに入社した新入社員は、基本的に営業部署に初期配属されます。
私自身も2009年に新卒入社して、個人向け住宅の仲介業務を約8年経験しました。
その後、営業部門内の能力開発部に異動しました。その業務を通して人財育成の奥深さに興味を持ち、約3年前に本社人事部へ異動し、現在は全社の採用・人事全般を担当しています。

当社は人が介在する営業が事業の中心にあるため、「人財が命」という風土が強いです。社内外に対して「人材」ではなく、「人財」と呼んでいるのもその一環です。人財育成施策や社員向けの研修も手厚くやっていると自負しています。業務スキル系の研修から、IT・データ活用に特化したオンライン教育まで幅広く力を入れています。そんな社員を大事にしている会社なので、2021年卒の新入社員の離職率が上昇したことで、社内に大きなショックが走りました。

2021年卒の採用活動当時は、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言の影響で、複数の業界で採用見合わせが相次ぎました。例年、当社に入社する学生のなかには他業種の選考にも参加し、比較検討を行った結果、最終的に当社を選ぶ人も一定数おりました。この年の新入社員のなかには、自分が納得できる就職活動ができずに、「自分のキャリア選択の納得感」や「就職活動をやりきった感覚」がないまま当社への入社を決意したケースもあったのかと思います。それが、離職率上昇の一因かもしれないと捉えています。

今の若者の価値観に、施策がマッチしていないのではないか

当社では早期離職は「本人にとっても会社にとっても大きな損失になる」と考えています。2021年度半年終了時点で、例年にはなかった複数名の新入社員からの退職意向が告げられた時には、衝撃を受けると共に、自社の新入社員フォロー施策を見つめ直さなければならないと真摯に受け止め、すぐに社内で議論を開始しました。

対応策の検討を進めるなかで、今の若手層はかつての同年代よりも「WILL(自分の意志や志向)」が強い傾向があると思い当たりました。新入社員であっても将来の「なりたい像」や5年後のキャリアパスをしっかり考えている人が多いように思ったのです。
一方、当時実施していた新入社員研修は営業ロールプレイングなどスキル開発型で、画一的な側面も強く残っていました。

本人の「WILL」を重視した方が定着を促すことができ、なおかつ本人の成長につながるのではないかとの仮説のもと、新入社員のフォロー施策全般を見直すことにしたのです。

新入社員の「WILL-CAN-MUST」を固めるオンボーディング研修を実施

WILLを重視した研修を行うためには、入社後の早い段階で「自分のWILL」をまずは自覚してもらう必要があります。その最中に、リクルートが社員の育成のために利用している「WILL-CAN-MUST」のフレームワークを活用することをリクルートマネジメントソリューションズの営業担当から提案いただきました。

◆WILL(本人が実現したいこと)
◆CAN(今後生かしたい自分の強みや克服したい課題)
◆MUST(能力開発につながる業務・ミッション)

働いていくうえでは、WILLも大事ですが、会社が求めるMUSTとすり合わせることも必要です。また、現場に出て行くと苦しい場面もあるため、成長実感を持つためにCANも忘れてはならない観点です。自社で企画している研修内容と、上記のフレームが非常にフィットしていると感じ、各種の施策に取り入れることにしました。

SPI3 for EmployeesがOJT担当・メンター・新入社員をつなぐ共通フレームに

まずは、4月の新入社員向けのオンボーディング研修でSPI3 for Employeesを活用することにしました。本人が結果やデータを基に自分の特徴を理解できるのはもちろんのこと、ツールがあることにより教育担当(OJT担当)やメンター(他部署所属で相談役となる先輩社員)が新入社員を理解するための材料にもなると考えたのです。

新入社員が受検した結果を、まずは本人に開示し、それを基に研修を行っています。実際の研修の場では、SPI3 for Employeesという客観指標があることで、自分のモチベーションリソースを踏まえたWILLの言語化や、CANやMUSTへの接続がしやすかったと感じています。
また、同じフレームを利用することで、新入社員同士の相互理解を促進することができました。異なる結果が出た場合はもちろんのこと、同じワードを持つもの同士であっても背景が異なることを理解するなど、お互いの理解を深めるきっかけとして使うことができました。

さらに、SPI3 for Employeesのモチベーションリソースを活用し、4つのタイプに分け、そのタイプに応じた「1年目のやりがいや壁」という座談会も好評でした。自分と同じ価値観の先輩の話を聞けば、新入社員にとっては自分が今後働くイメージも持ちやすいでしょう。

SPI3 for Employeesを使ったオンボーディング研修では、従来以上にリアリティを高めながら「WILL-CAN-MUST」の接続ができた手応えを感じました。

新入社員のデータを基に、OJT担当やメンター(他部署所属で相談役となる先輩社員)などの新入社員の育成に直接関わるスタッフに対しても結果の読み取り方の説明会を実施しています。新人の個別の志向や価値観を理解してもらい、アドバイスや育成のヒントを得てほしいと思いました。

また、先輩側にも同じくSPI3 for Employeesを受検してもらい、自分の特徴も踏まえながら尺度の理解をさらに深めてもらうという工夫も行いました。先輩社員に回答の負荷は多少かかりますが、もともと人の育成に前向きな社員が多いため、協力的でした。

SPI3 for Employeesは新入社員と受け入れ側をつなぐコミュニケーションツールとして機能していると感じます。助言をする際も、本人理解があることで、相手が受け入れやすい伝え方ができるなどのメリットがあるでしょう。

また、新入社員に対しては、コンディションを測定するサーベイも年に4回実施しています。
その結果を基に研修構成を考えたり、事前に新入社員の傾向を研修講師に共有することで伝え方のニュアンスを変えてもらうこともありました。気になる人に関しては、人事から個別に声がけをするなど、きめ細かいフォローが可能になりました。

このような施策を通じ、組織一丸となりながら、新入社員をフォローする体制を構築してきました。

離職率が3分の1に減少。データを活用して、組織的な分析へと発展

一連のオンボーディング施策の実施により、2022年卒新入社員の離職率は前年の3分の1程度に下がりました。
これは当社のコロナ禍前も含めた過去の離職率と比較しても低い水準なので、施策全体として一定の成果はあったと考えています。

また、今回の施策を通じて、SPI3 for Employeesのデータも蓄積されつつあるので、今後は新入社員フォロー以外にも生かしたいと考えています。

これからも、データ分析を通じて「SPIデータ×配属」や「現在いる社員のSPIデータ×採用基準」 などに、活用の幅が広がる手応えは感じています。今後、全社員が受検し、組織的なタイプの特徴などが分析できれば、組織開発的なアプローチに展開できる可能性もあるので、継続して取り組んでいきたいと考えています。

人事部 人材開発課長(取材当時) 中島 彰裕 様 

野村不動産ソリューションズ株式会社

従業員数:
1,866名(2023年4月時点)
業種:
不動産 
課題:
  • マネジメント
  • キャリア自律

もっと事例を見る